近年、高齢者の食支援、肺炎予防の目的で、口腔ケアの重要性が提起されている。しかし高齢者介護の現場において、口腔ケアは十分に浸透しているとはいえない。本研究は、その要因の一端が、専門性が異なる多職種の協働状態にあるのではないかと考え、口腔ケアに関与する多職種が協働する現場で惹起されうる問題を把握し、それがサービス受給者にいかなる影響を与えているのかを明らかにすることを目的とした。資料分析、参与観察、グループインタビューから、スタッフの人員不足、ケアの優先度の他に、サービス受給者の家族との関係性や、身体化された口腔ケア習慣が、施設における口腔ケアの円滑な実施に関与している可能性が示唆された。
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