平成28年度はしめくくりの年であった。ここまで行なってきたフィールドワークおよびライフヒストリーの聞きとりにかんする研究を継続しながら、ベルギー社会や境界地域の特質にかんする資料調査をすすめた。 今年度の研究では聞きとり調査を行なうとともに、それと並行して聞きとりから明らかになったベルギー社会、またベルギーの社会集団の特質にかんする資料調査を行なった。また収集した資料に基づき、これまでにえられた聞きとりの検討を行なった。これにより、聞きとりの内容をこれまで以上に立体的に把握できるようになった。またベルギー社会にみられる特徴をライフヒストリーの語りから逆照射することで、他国の類似の制度あるいは社会集団との比較につながる研究課題が明確になった。 また調査・研究の結果、都市や地域の境界にかんする研究課題を明確にとらえることができるようになった。これにより境界にかんする比較研究についての課題が視野に入ってきた。この点は次年度以降研究者間の協力体制を作り上げ、いっそう実り豊かな研究プロジェクトにつなげたいと考えている。 またこれまで行なってきた研究の内容を論文や研究会、シンポジウム等で報告し成果の発信につとめた。とくに聞きとり過程で明らかになったベルギーのライシテにかんするベルギー研究者の関心は高く、今後さらに大きな展開が期待できるところである。また平成28年12月に行なわれたシンポジウムでの報告においては、共通の学問的関心をもつ研究者との交流が新たに生まれた。こちらでも今後の展開が期待できる。
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