研究計画最終年度である平成27年度においては、主に以下の2点の研究活動を行った。(1)都市的生活様式の時系列分析に着手したこと、(2)都市の計量社会学の議論を理論・方法の両面からまとめたこと、である。 1点目については、「第2回都市生活と家族に関する意識調査」に参加し、親密な友人に関する時系列分析を行った。「第2回都市生活と家族に関する意識調査」は、1994年に朝霞市と山形市を対象に行われた「第1回都市生活と家族に関する意識調査」と比較可能な設計で約20年後の現代において再び調査したものである。そして第1回調査と第2回調査の比較分析を行った結果、日本における親密な友人における年齢や趣味に関する同質性が高まっていることを明らかにした。そしてそのような傾向は特に山形で強く生じており、地方都市の状況により大きな変化があった可能性を示唆するなど、都市社会学の新展開にもつながる内容を調査報告書にて報告している。 また、2点目については、数理社会学会が監修した『計量社会学入門』において、都市の計量研究における理論と方法に関する内容を担当した。これまでの代表的な都市理論の議論をまとめ、調査・分析手法との対応関係について議論し、都市社会学の理論と方法についてまとめた。 研究期間全体をとおして、(1)都市度尺度の再検討と確立に関する議論については、GISを用いた研究成果を査読付き論文を含めて公表し、(2)時系列分析については都市社会学の代表的な調査の一つである「都市生活と家族に関する意識調査」の時系列分析に取り組んだ。また、(3)国際比較研究に関しては国際社会学会での査読付き報告をはじめとして、学会報告を複数回行っている。さらに、これまでの研究成果をまとめた単著を出版することもできたことから、当初計画していた以上に研究を進めることができたといえる。
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