本研究の目的は、「日本社会」におけるマイノリティの社会的アイデンティティが顕在したうえで、マジョリティとの結合的な集団関係がいかにして形成されうるのかを、部落問題を事例として検証することであった。 三世代にわたる当事者へのインタビューや、各種調査報告書を用いた分析を通じて、部落解放運動が機能している地域においては、家族を通じた肯定的なアイデンティティを形成する条件が整っているが、いったんそうした地域を離れるとマジョリティによる部落問題への無理解は否めず、アイデンティティを顕在化させることが困難な現状を明らかにした。
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