研究課題/領域番号 |
25780315
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
林 雄亮 武蔵大学, 社会学部, 准教授 (30533781)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会階層 / ライフコース / 結婚 / 家族 / 貧困 |
研究実績の概要 |
1.性行動と性意識に関する階層問題についての大学生調査を実施した。サンプルサイズは約800であり、ある程度の統計分析には耐えられるデータセットとなっている。調査票には、大学生の性に関する実態、意識、大学生の親の学歴、職業などの高いプライバシーをともなう質問を多く設けたが、回収率や質問項目ごとの無回答率も低めに抑えることができている。 2.若年層の貧困問題についての研究も進めた。主な知見は以下の通りである。 (1)個人収入150万円未満を低所得状態と定義し、若年層内部に広がる経済的不利の現状を確認した。その結果、若年未婚者の約3割は低所得状態にあり、正規雇用以外の雇用形態が低所得状態に陥りやすいことが明らかになった。また低所得状態の経験回数を調べたところ、男性で2~3割、女性で約半数もの人々が少なくとも1度は低所得状態を経験していることから、これは稀な現象ではなく身近な不利だということが明らかになった。 (2)労働市場への参入時の状況が調査時現在の低所得状態に影響を与えるプロセスを考察したところ、学校から職業への移行において間断があることは初職が正規雇用以外であることに影響し、初職は職業キャリアを通して現職を規定し、現職が正規雇用以外であると低所得状態に陥りやすくなるという不利の連鎖が明らかになった。また初職が非正規雇用であっても現職で正規雇用になることができれば低所得状態へ陥る危険性が低いと予想したが、そのような挽回のチャンスも少ないようである。 (3)ある時点の低所得状態がその後のライフコースに与える影響について、結婚を取り上げて検証したところ、そもそも低所得状態からは結婚が困難であること、結婚できたとしても結婚後の世帯の経済的水準は低いことなどから、低所得状態がその後のライフコースにも負の影響を与えていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、性行動と性意識の階層的不平等に関する大学生調査を実施した。調査計画から実査、データ作成、データクリーニング、基礎集計の作成までが平成26年度内に終了しており、平成27年度には速やかに分析に入ることができる。また、若年層の職業キャリアと貧困の研究、社会階層と離家の関係に関する研究についても仮説や分析案ができ始め、研究成果が求められる最終年度に向けての準備がほぼ整った状態である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、平成27年度は以下のことに取り組む。第1に、性行動と性意識に関する階層問題に関する論文を完成させる。第2に、本研究課題の最重要課題であるライフコースを通じた不平等の連鎖構造について、具体的に若年層の貧困問題を取り上げ論文を完成させる。第3に、本研究課題の自己点検と評価を行い、次年度以降の研究計画を具体化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査に係る旅費と人件費を削減することができたために生じた額である。
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次年度使用額の使用計画 |
海外の研究動向を把握するために、所属大学の図書館に入っていない英語書籍の購入に充てる。
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