研究課題/領域番号 |
25780323
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
竹内 里欧 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 講師 (40566395)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナショナリズム / 文明化 / 近代化 |
研究概要 |
本研究では、「ナショナリズムと『文明的』自己像形成をめぐる現象」というテーマについて、比較・歴史社会学的考察を行うことを目的に研究活動を行った。特に、近現代日本社会におけるナショナリズムやアイデンティティのあり方の歴史的・文化的特徴を、「文明化」を象徴する理想的な自己像形成にまつわる現象を研究することにより、比較社会学的視点を含みつつ明らかにすることを目的とした。 第1年目である本年の主な研究内容は、資料収集・精読、および、論文(「Paradox of Subjectivization: Modern Japanese Intellectual Elite’s Reaction to the Image of the West」『椙山女学園大学研究論集』第45号(社会科学篇))の執筆、辞書項目の執筆(『日本文化の百科事典』丸善出版、近刊)である。論文においては、新渡戸稲造の生涯や著作(特に「文明化」を象徴する理想的な自己イメージ形成にまつわる言説)を代表例としつつ、西洋化とナショナリズムという二つの使命を背負った近代日本の知識人が主体化する過程にどのようなパラドクスが存在したかを考察した。明治維新以来、高度経済成長頃まで、近代化と文明化を象徴する「西洋」という表象は、近代日本の知識人にとって、両義的なモデルであり続けた。論文では、それらの知識人が近代化というプロジェクトを遂行するために、いかにして「西洋」という表象を利用したか、またそこにはどんなからくりがあったかということを、分析した。特に、主体化に含まれるパラドクスに注目し、近代日本の知識人の主体化と「国民」の形成の関係を論じた諸議論を参考に、さらに考察を深めた。なお、本年は、産前産後の休暇及び育児休業の取得により、2013年10月より研究を中断している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1年目である本年度は、ナショナリズムにかんする研究を精読し、理論的考察を深めるとともに、資料収集を行い、独立論文(「Paradox of Subjectivization: Modern Japanese Intellectual Elite’s Reaction to the Image of the West」『椙山女学園大学研究論集』第45号(社会科学篇))をまとめ、辞書項目の執筆(『日本文化の百科事典』丸善出版、近刊)を行った。論文においては、新渡戸稲造の『武士道』をめぐる言説の分析を中心に、近代国民国家において「真に文明化された理想的自己像」のイメージ形成をめぐっておこった現象の分析を行った。論文は、京都大学人文科学研究所におけるワークショップ「Crossing Boundaries: Art and History Part II Crossing Boundaries in History」(京都大学人文科学研究所 共同研究「日本・アジアにおける差異の表象」主催)の成果をもとに、内容を発展させ、英語で執筆した。辞書については、近世~近代日本の教育制度の特徴について項目執筆を行った。本年度は、妊娠中の体調不良のため、出張を、当初の計画どおり遂行することが困難であったため、資料収集・学会発表をぞんぶんに行うことが難しかったが、勤務先の大学図書館の相互利用制度を活用し、資料収集の不足分を補うようにつとめるなどした。不足分については、研究再開時に補足したい。また、本年度は、2013年10月より、産前産後の休暇及び育児休業の取得により、研究活動を中断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、「ナショナリズムと『文明的』自己像形成をめぐる現象」というテーマについて、比較・歴史社会学的考察を行うことを目的とする。本年は、第1年目にあたるが、産前産後の休暇及び育児休業の取得により、2013年10月より研究活動を中断することとなった。そのため、今後は、第1年目に行う予定であったが中断した作業を行うとともに、第2年目、第3年目に行う作業も行っていく。また、第1年目に不足のあった作業としては、体調不良により出張を当初の計画通り遂行することが困難であったことから、特に、資料収集・学会発表を十分に行うことが難しかった。そのため、今後は、多数の大衆雑誌を所蔵する国立国会図書館、国際日本文化研究センター、日本近代文学館を中心に資料収集活動を行うとともに、ナショナリズムと「文明化」の関係について、比較の視点を交え、国内外で学会発表を行い、様々なコメントや批判を得る機会を増やす。また、人種研究会、ジェンダー研究会、現代社会学研究会等へ参加し、勉強の機会をもつ。また、P. コルホネン教授を中心とするユバスキュラ大学社会科学哲学研究所の研究者と情報意見交換を行い、本研究についてコメントをいただく。そして、研究課題について小テーマに分割し、各々のテーマについて独立論文を執筆し、国内外の学術雑誌に論文投稿を行うことを考えている。これらの作業の後、成果報告書(最終稿)を執筆する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年10月より、産前産後の休暇及び育児休業の取得を行ったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、研究再開時に使用する。 研究再開後は、今回生じた次年度使用額を、第1年目に行う予定であったが中断した作業、また、研究中も妊娠にともなう体調不良のため十分に行うことが難しかった作業、特に、資料収集活動、学会発表、研究会報告に重点的に使用したい。具体的には、国立国会図書館、国際日本文化研究センター、国立民族学博物館、日本近代文学館等への資料収集活動、「Nordic Association for the Study of Contemporary Japanese Society Conference」(於北欧)、「日本社会学会」(於日本)、「関西社会学会」(於日本)等での学会発表、人種研究会、現代社会学研究会等での研究報告を考えている。これらの活動をとおし、資料収集をぞんぶんに行うとともに、様々な研究者からコメントや批判をいただき、勉強を深める機会を設ける。
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