研究課題/領域番号 |
25780326
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
倉島 哲 関西学院大学, 社会学部, 教授 (70378884)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 身体技法 / 太極拳 / 国際比較研究 / 文化間伝播 / 身体感覚 / 新郷市 / マンチェスター / 武術 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、平成26年度と同様に、中国・新郷市のX太極拳研究会と、イギリス・マンチェスターのC太極拳センターにおけるフィールドワークを行った。また、研究成果は、単著論文2本として発表することができた。 新郷市の調査は、平成27年10月3日から9日にかけて行った。具体的には、研究会のメンバーとして練習の参与観察を行ったほか、指導者および生徒たちに半構造化インタビューを行った。それにより、昨年に対する変化を知ることができたほか、指導場面のビデオ録画をすることで、これをエスノメソドロジー的に解釈するための素材を得ることができた。 マンチェスターの調査は、平成28年3月1日から7日にかけて行った。中国の調査同様、教室のメンバーとして練習の参与観察を行ったほか、指導者および生徒たちに半構造化インタビューを行った。さらに今回は、C太極拳センターと提携する2つの組織を訪問し、その代表者のインタビューを行った。第一に、中国系住民のための健康情報センターであり、第二に、中国系住民のための養老施設を管理する企業である。いずれの組織も、C太極拳センターに資金を提供することで高齢の中国系住民の福祉を目的とした無料のクラスを開設している。 2つの組織の代表者のインタビューにより、イギリスに移民した中国系高齢者にとっての太極拳の重要性が明らかになった。健康増進と転倒予防はもとより、英語が不得手なために孤立しがちな中国系高齢者に、太極拳は文化的に馴染みのある方法で社交のきっかけを作り出しているのである。これは、中国人がイギリス人に伝えた身体技法として太極拳を捉える従来の視点からは見えてこないものである。 以上に加え、マンチェスターでは指導者資格認定講習の参与観察を行うことで、生徒と指導者という二つの異なる視点から太極拳の身体技法を捉えることが可能になった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通り、中国・新郷市のX太極拳研究会と、イギリス・マンチェスターのC太極拳センターの調査を行うことができ、また、研究成果を単著論文2本として発表することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
調査対象の太極拳教室における指導者および生徒たちの上達にともなう変化をより正確に捉えるために、3年間の予定であった調査期間を1年延長し、4年間とした。延長した利点を生かし、平成28年度は中国とイギリスの双方について最後の現地調査を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査期間を延長することで、調査対象の太極拳教室の指導者および生徒の上達にともなう変化をより正確に捉えることが可能になる。研究目的をより精緻に達成するため、調査期間を1年延長し、4年間とした。
|
次年度使用額の使用計画 |
調査期間を延長した利点を生かし、平成28年度は中国とイギリスの双方について最後の現地調査を行うため、未使用額は旅費に充当する。
|