研究課題/領域番号 |
25780328
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研究機関 | ノートルダム清心女子大学 |
研究代表者 |
濱西 栄司 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (30609607)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会運動 / グローバル化 / サミット / グローバル運動 / アラン・トゥレーヌ / 新しい社会運動 |
研究実績の概要 |
平成27(2015)年度は、(1)まず予定通り、組織連関分析の成果を整理し、日本における過去5回のサミット・プロテストの争点・アクター・アクションの変化と特徴を明らかにした。さらにそれらの要素が複雑に絡み合うメカニズムを考察するために、敵手である「サミット」の制度的特徴(資本主義・先進国・国際問題中心・ヒエラルキー性)がもたらす受益・受苦構造に着目し、4つのサミット・プロテストの重層化、という新しいサミット・プロテスト像を提示した。その上で、4つのサミット・プロテストが一つのものとして主観的・客観的に成り立つメカニズムを、サミットの時間・空間的制約による空間的密集と事後的な集合的経験の構築から説明した。その成果を共著本(野宮・西城戸編 2016)の1章として出版し、より詳細な分析を単著(濱西 2016[発行確定])のなかで行なった。 (2)トゥレーヌらの社会学理論・概念・歴史的仮説を総括するとともに、日本社会に応用できるように福祉レジーム論等を介して理論を組み替え、日本型社会運動・文化運動・グローバル運動等の概念を社会組織・運動の分析に実際に適用した。またサミット・プロテストの特性(多様な要素を含みつつ一つの集合的現象として成り立つ)が形成されるメカニズムについて新しい説明理論を組み立てた(複合レジームモデル・敵手中心モデル・密集・経験モデル)。以上の成果を上記の単著として出版した。 (3)理論学説研究をさらに進め、トゥレーヌ理論を初期パーソンズの行為論と接続し、さらに時間論(タッボーニ、ギュルヴィッチ、エリアス他)と結びつけることで、社会運動研究における行為論の解釈枠組を精緻化した(濱西 2016[掲載確定])。またトゥレーヌ派デュベの「経験の社会学」理論に関する学説的研究を行なった(Hamanishi 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、組織連関のレベルに特に焦点をおいた研究を詳細に行ない、その成果を含む共著本・単著本を出版することができた。また相互行為レベルについても空間的密集・集合的経験というアイデアを単著において展開することができた。その上で運動の特性のメカニズムに関する新たな説明理論を、複合レジームモデル、敵手中心モデル、密集・経験モデルとして具体的に提示することもできた。共著本が先に出版される関係で単著の出版はやや遅れたが、結果として単著の内容もより充実したものとなった。 当初の計画外のこととしては、トゥレーヌ理論を日本社会に適用するための新たな解釈理論を単著において示すことができたこと、学会からの依頼でトゥレーヌ理論とそのパートナーである故タッボーニの時間論・アンビバレンス論、及びギュルヴィッチ・エリアス・パーソンズ理論等との比較研究の機会をもつことができたこと、その過程でトゥレーヌ本人やその弟子たちからの積極的な協力が得られたこと、などがある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたり、伊勢志摩サミット調査と並行して、理論的な総括をさらに進める。とりわけ相互行為レベルでの空間的密集・集合的経験というアイデアを、社会構築主義・現象学的議論と照らし合わせ、組織中心の既存のパラダイムを批判的に検討する(2016-17年度掲載予定)。 また英語での国際的な発信を強化するために、国際社会学会RC47における活動(理事会、2016年7月の国際社会学会フォーラムにおけるRC47ワークショップ、プレカンファレンス、トゥレーヌ・セッション等)をさらに活用していく。単著の部分的英訳を進め、海外からのフィードバックを得る形で、内容の修正・発展を行ないつつ、英語版出版へ向けて動いていく。
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