平成28(2016)年度は予定通り、これまでの研究成果をもとに、単著『トゥレーヌ社会学と新しい社会運動理論』を出版した(福祉社会学会「奨励賞」受賞:2017年5月)。 (1)並行してさらに調査研究を進めるべく、伊勢志摩サミットに向けた国内・海外の抗議ネットワーク形成の動きを追いつつ、開催地の抗議支援インフラの状況を確認するために現地調査を行い、資料を収集した。その上で2000年、2008年サミット時のネットワークとの比較分析を行い、争点、アクター、アクションの変化について検討した。NGO/地元NPOを中心としたネットワークの広がりを通して、サミットのもつ先進国中心性への批判と国際問題中心性への批判とが結びつき維持されるという新しい段階に移行しつつあることが確認できた。また、2008年と比較して、サミットが資本主義諸国の会合であることへの批判と、ヒエラルキーを体現することへの批判が、大幅にみられなくなったことも確認した。その要因・背景について検討を行うとともに、サミット・プロテストが社会にもたらした成果・影響についても研究を進めた。 (2)並行して理論構築をさらに進めるために、トゥレーヌ理論をさらにパーソンズ理論等と比較する研究論文(『社会学史研究』)を執筆し、構築主義と社会運動理論の相互関係に関する研究論文(『社会学評論』)も執筆した。またトゥレーヌの後継者たるデュベの社会学理論に関する英語論文を執筆し(Social Theory and Dynamics誌)、社会理論と社会運動論を全体的に結びつけるべく、社会運動・集合行動研究ネットワークにおいて同趣旨のセッションをたちあげた。それらの成果を国際社会学会のフォーラム(ウィーン大学)や東アジア社会学者ネットワーク会議(チュンアン大学)において報告した。
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