研究課題/領域番号 |
25780329
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中村 英代 日本大学, 文理学部, 准教授 (50635191)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 依存症 / 回復 / 12ステップ / 認知行動療法 / 摂食障害 / 薬物依存 / アルコホーリクス・アノニマス |
研究実績の概要 |
本研究では、日本における依存問題をめぐる言説の状況や、依存問題への介入・支援の現状を考察することを目的としている。 本研究の成果として、本年度は2本の論文を執筆し、学会報告を1件行った。その他に、現在査読中の論文が1本あり、掲載の方向で調整が進んでいる。また、2016年度中に、研究成果の一部を単著として刊行する予定であり、こちらも順調に調整が進んでいる。 なお、ユタ州立大学から、大学生を対象とした摂食障害や自己意識に関する国際比較(米国・日本・タイ)についての共同研究の依頼を受けた。摂食障害に関連する質問紙調査ということで、本研究課題とも関連が深いため、共同研究の依頼を承諾し、日本では、2015年度の6月に調査実施ができるよう調整済みである。なお、本調査に関しては、申請者の所属大学(日本大学)、ユタ州立大学ほか関連大学の調査倫理委員会は、すでに通過している。 その他、学術的な成果を広く社会に還元するアウトリーチ活動(研究成果の公開活動)として、エッセイを1本執筆した。エッセイは、依存症と12ステップ・プログラムについて、専門家以外の人々にもわかりやすく説明したものである。さらに、一般の人々や医療・福祉職の方たちを対象とした、摂食障害に関する講演を3回行った(6月・第55回日本心身医学会市民公開講座、10月・摂食障害家族の会、3月・小平市「親と子のメンタル相談事業」)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、3本の論文を執筆し(内1本は査読中)、1件の学会報告を行ったという点で、十分な成果が出たと考える。また、本研究課題にまつわるエッセイの執筆、3件の講演を含め、アウトリーチ活動も十分に行えた。依存症にまつわる単著の出版に向けた調整も順調に進行している。 その他、海外からの共同研究(ユタ州立大学)という、国際的な研究にも関与することができた。 海外との共同研究や単著の出版準備を含めると、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の具体的な研究課題として、依存症からの回復プログラムである12ステップ・プログラムについての考察、社会システムの観点からの依存症の考察が挙げられる。12ステップ・プログラムは依存症の領域で世界的に普及している、当事者主導のセルフヘルプ・グループで用いられているプログラムであるが、その治療効果には賛否両論ある。12ステップ・プログラムの治療効果をめぐる言説は、海外の研究を含めると膨大にあるが、それらの資料を収集し、12ステップ・プログラムをめぐる賛否の状況を、明確化したい。 また、人類学者のベイトソンによる12ステップ・プログラムの考察は、後の12ステップ・プログラムの研究に多大な影響を与えてきた論考だが、内的に矛盾している部分が見られる。ここから、ベイトソンの研究を、理論的に検討しなおす必要を感じている。2016年度中には、こうした理論研究にも着手したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた近距離出張がキャンセルになってしまったため。また、注文していた書籍が取り寄せできなかったため、計3263円の支出が次年度に繰り越しになってしまいました。
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次年度使用額の使用計画 |
近距離出張と、昨年度は取り寄せることができなかった書籍の再注文に充当させていただきます。
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