研究課題/領域番号 |
25780329
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中村 英代 日本大学, 文理学部, 准教授 (50635191)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 依存症 / 薬物依存 / 摂食障害 / 回復 / ダルク / 12ステップ・プログラム |
研究実績の概要 |
本研究では、日本における依存問題をめぐる言説の状況や、依存問題への介入・支援の現状を考察することを目的としている。 これまで、薬物依存からの回復支援施設でフィールド調査を継続し、同時に、摂食障害やアルコール依存を含め広く依存症に関する文献研究を進めてきた。27年度の研究成果としては、1本の論文を執筆し、また本研究の成果の一部が含まれる教科書を1冊執筆した。 その他、学術的な成果を広く社会に還元するアウトリーチ活動(研究成果の公開活動)として、依存症への介入のあり方に関して、医師を含めた専門家向けの教育講演を1件、現在摂食障害等の問題で困っている方やその家族を対象とした講演を1件行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、1本の論文と1冊の教科書(単著、28年度前半に刊行予定)を刊行することができた。論文の数は1本と少ないものの、国内の社会学関連の学会誌で最も掲載が困難とされる『社会学評論』に掲載された。この論文は約5年近くに渡る長期の調査の成果である。薬物依存からの回復支援施設ダルクで行われている回復支援の本質を描き出すことに、はじめて成功した研究成果であると考えられる。今後この論考を基にした単著の刊行を予定しており、こちらも順調に進んでいる。また、教科書は社会学全般を扱っているが1章分を依存症に、別の1章分を摂食障害にあてることで、本研究の成果を教育活動にも反映させることができた。 以上、特に依存症からの回復支援施設での長年のフィールドワークの成果をまとめることができたという点において、本年度は、当初の計画以上に研究が進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
文献研究やフィールドワークを継続するなかで、依存症やそこからの回復は、個人という範囲を超え、資本主義社会システムと深い関連があることが明らかになってきた。たとえば、ある薬物依存からの回復支援施設は、我々が生きる現代社会の原理とは全く異なる原理に基づく共同体を形成しており、人々はそうした共同体のなかで回復に向けて新しい生き方を模索していた。これらの研究成果を踏まえた今後の研究課題は、施設でのフィールド調査や依存症に関する言説の考察を通じて明らかにしてきたことを、現代の社会システムとの関係でとらえなおすことにある。 28年度は本研究課題の最終年度になるので、依存症という現象を考察するだけでなく、それらの考察を通じて、現代社会の問題を浮き彫りにしていくことを課題とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の図書の購入が間に合わず、21,566円の支出が次年度に繰り越しになってしまいました。
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次年度使用額の使用計画 |
予定した図書の購入に充当させていただきます。
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