研究課題/領域番号 |
25780337
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
長沼 葉月 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (90423821)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ソーシャルワーク / 面接技法 / 支援困難 |
研究概要 |
『ソーシャルワーカーが直面する支援困難事例とその対応方法に関する研究』に取り組み、ソーシャルワーカーが直面する支援困難事例とその対応方法について検討した。「支援困難」と感じる事例や場面に関して、個別またはグループインタビューを行った。対象者はソーシャルワーク研修に参加した介護支援専門員や生活相談員、総合病院のMSW、精神科病院のPSWである。 結果として、初任者と中堅者とで共通して支援困難と感じるのは、本人と家族の意向が異なる時、またその他の関係者の意向が異なる場合であった。また相手が感情的になってしまった場合や、障害ゆえに意思疎通がうまく図れない時に困難感を感じることが多かった。そのような状況への対応として、初任者は「先輩に訊く、他の人の対応を観て学ぶ、経験を重ねて長期的な見通しをもつようにする」という対応方法を取ることが多かった。中堅者は、多角的に情報収集を行い記録を整理して振り返ったり、家族や他の関係者の意向に合わせた情報提供を意図的に行うこと、一人で進めずチームで対応すること、緩やかに関与を続けて変化を引き起こすことに取り組んでいた。ソーシャルワーカーの配属部署の限界や、各種関連制度のもつ限界、利用者特性に伴う困難性はあるものの、相談や連携の技法やアセスメント手法を身につけることによって困難感を一定程度緩和するのに役立ったり、困難な場面においても対応方法を探索できることが示唆された。 これらを踏まえて、困難事例への対応方法に関する研修では、コラボレイティヴな仕方で感情を取り扱う技法や相手の意向を把握する技法を取りこむこと、家族や関係機関に対してこれらを適応する方法を紹介する必要があるとともに、事例展開から学ぶ機会を組み込むことが有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にほぼ沿った形で調査を遂行し、分析を進めた。精神障害者就労支援員や生活保護ケースワーカーについては比較可能なサンプル数を得ることができなかったが、中堅者への調査を実施し同じような結果を得ることができている。 今後は調査成果に対応させた研修計画を構築する必要がある。ある程度プログラム構成を進めていたが、年度末に社会構成主義的な視点を連携の技術に応用させた新しいアプローチについて海外からの紹介を受け、より洗練された仕方での取り込みを試みているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には『『支援困難事例への相談面接技法』についての研修方法の開発』研究に従事する予定である。行動変容アプローチ等の問題志向的な支援技法と、ソリューション・フォーカストアプローチや、ナラティブ・アプローチのような社会構築主義的な手法には、問題維持に関する『システム的思考』があり、これをキー概念として統合し、ソーシャルワーク的な支援に関する理論的な整備を行う。その上で、支援困難事例の構成要素に合わせて、ソーシャルワーク面接場面において活用可能な技法を組み合わせて行く。次いで、これらの理論の提示と実践場面のロールプレイを組み合わせた研修プログラムを作成し、インタビュー協力者らにワークショップを行う予定である。 なお、当初は相談面接場面にフォーカスをあてていたが、昨年度の研究により家族や関係機関との連携に大きな困難が伴うことが明らかになったため、連携の際の見立て等も含めた「対話の技法」を整理していく必要があると考えている。
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