研究課題/領域番号 |
25780338
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
室田 信一 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (00632853)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コミュニティ / ソーシャルワーク / 社会政策 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本研究は、近年日本国内で推進されている地域を基盤としたワーカー配置事業(コミュニティソーシャルワーカー配置事業など)のあり方を問う上で有意義である。社会政策の考え方に普遍主義と選別主義という考え方があるが、社会的排除などの現代的な社会問題が表面化している中で、どのような考え方に基づいてワーカーを配置するべきかという議論は十分になされていない。本研究はそうした議論を行うための材料を提示し、政策議論を喚起するものである。 社会的排除の問題は先進資本主義国家に共通する問題であり、各国はそれぞれに対策を講じている。日本でも海外の対策を参考に同様の対策が講じられているが、特に地域で展開される相談援助機能に関しては、日本独自の地域性や文化などの影響を受けるため、海外の動向を参考にしながらも、日本独自の対策について検討することが求められている。本研究の重要度は、そうした国際比較の視点を取り入れながら、日本におけるローカルな実践に黔急性かを還元する点である。 以上の観点から、平成26年度は大きく分けて以下の2つの研究に取り組んだ。1)地域を基盤とした生活支援サービスの先駆事例調査、2)アメリカと日本のコミュニティ・オーガナイジング実践の比較研究、3)ニューヨーク市内におけるコミュニティ・オーガナイザー配置事業の実態調査。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記で示した研究目的を達成するために、平成26年度は当初の計画に若干の変更を加えて、以下の研究活動をおこなった。 第一に、日本独自の地域実践に関するフィールド調査をおこなうために、全国社会福祉協議会の協力を得て国内各地で生活支援サービスの活動を推進している諸団体を訪問し、実践現場における専門職とボランティア、当事者などの協働実践の実態把握をおこない、この成果を発表した。 第二に、NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(COJ)の協力を得て、ハーバード大学特任講師のマーシャル・ガンツ博士と大阪府豊中市社会福祉協議会の事務局次長の勝部麗子氏と公開研究会を開催し、日米の実践の比較研究をおこなった。日本の地域における実践の独自性を、アメリカの地域実践に長年取り組んでこられたガンツ博士の視点から分析していただいた。この研究成果はCOJのホームページにて発信している。 第三に、ニューヨーク市内においてコミュニティ・オーガナイザーの活動に助成しているニューヨーク財団への調査と、市内でコミュニティ・オーガナイザーの養成をおこなっているANHDの養成事業担当者に対してインタビュー調査をおこなった。地域を基盤に活動するコミュニティ・オーガナイザーを雇用するための助成対象の選定基準及びその後のフォローアップのあり方についてインタビューし、NY市内におけるコミュニティ・オーガナイザー配置の考え方は、課題が集中しており、その課題に対して市民活動などの取り組みがすでに行われていることが条件となっており、選別主義的な傾向が見られた。 最後に、当初の計画通り、平成25年度の研究成果についてイギリスで開催されたIACDの大会で報告した。また、国内の状況について、日本社会福祉学会関東部会の年次大会で報告した。しかし、日程調整の関係で、当初予定していた国際ソーシャルワーク連盟の大会に出席して研究成果を報告することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成27年度は、主として研究成果のまとめと報告を計画している。 6月に開催される日本地域福祉学会の年次大会の国際シンポジウムにおいて地域を基盤としたソーシャルワーカーの配置にかんする政策のあり方について報告をおこなう。 7月に開催される日本ソーシャルワーク学会の年次大会において、日本における地域を基盤としたソーシャルワークの特徴とソーシャルアクションのあり方について報告をおこなう。 上記の内容とニューヨーク市内の調査成果を首都大学東京の学内紀要『人文学法』に掲載し、その他の研究成果を加えて報告書をまとめる予定である。
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