本研究では、コミュニティを基盤に配置された専門職について国際比較を通して、その根拠となる理論的背景や近年の政策動向を検証し、現在の日本のワーカー配置政策について検討した。 地域にワーカーを配置するという取り組みはソーシャルワークの原点である19世紀のセツルメント運動にその足跡を見出すことができるが、それらは民間の取り組みであり、自治体規模での取り組みではなかった。アメリカでは1960年代に「貧困との闘い」と呼ばれる政策の中でコミュニティ・オーガナイザーの配置が進められたが長くは続かなかった。イギリスでも1970年代に同様の政策が推進されたが、その後コミュニティ・ディベロップメント・ワーカーの配置へとシフトした。 本研究ではアメリカでコミュニティ・オーガナイザーの配置を積極的に行ってきている民間の財団(ニューヨーク財団)の配置実績を分析し、イギリスでは2010年からキャメロン政権のもと推進されてきたコミュニティ・オーガナイザー配置政策を分析した。それらの海外の取り組みや政策においてワーカーの配置の根拠となっている考え方と、日本のコミュニティソーシャルワーカー配置の根拠を比較して検討した。 結論としては、日本では普遍主義的な資源分配が行われており、対象となる地理的な空間(例えば一自治体)を学区などの単位に分けて、そこに資源を平等に配分してワーカーを配置するという政策が推進されており、一方でイギリスやアメリカでは、政府と民間の違いはあるが、ワーカーが配置される組織のキャパシティや実績を重視していることが確認された。 上記の成果は国内外の学会や学術誌を通して公表された。
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