研究課題/領域番号 |
25780339
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
岩永 理恵 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (60438166)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 原発事故 / 生活保護 / 住宅 / 社会的弱者 / 生活困窮者 / 当事者 |
研究概要 |
本研究の目的は、大きく二つある。①「社会的弱者」の生活を支える諸制度について、制度の整合性、連続性の観点から分析し、その問題点を明らかにすること、②震災と事故の影響を受けた人びと自身が起こした「社会的弱者」の暮らしを守ろうとする活動を調査、である。 2013(H25)年度当初、②の調査に取り組んだ。首都圏でも確認された放射性降下物と放射能汚染の広がりに対し子どもの命と自分たちの生活を守ろうと活動してきた母親10名に対するインタビュー調査を実施し、補足的に行政担当者へのヒアリング(計5名)も実施した。インタビュー調査の結果を用いた分析結果を、社会政策学会第127回大会(2013年10月13日)で報告した。生活する当事者の視座、それと行政、学校等との対応の落差を明らかにし、その落差を埋める鍵になるのは、両者の関係を取り持つ「触媒」と、当事者である方自身が、これまでの生活世界から少し外れた新たな活動を始めることであると考察した。また、阪神・淡路大震災後から、継続した支援を行っている団体代表へのインタビュー調査も実施した。 ①については、特に阪神・淡路大震災に関する資料を収集し、住宅問題に焦点を当てた研究を行った。研究の成果は、「神戸市の借り上げ復興住宅問題――住宅保障と被災者」『神奈川県立保健福祉大学誌』第11巻第1号、3-11頁、2014年3月にまとめた。 今後は、①をさらに発展させるべく、住宅に関心を寄せながら、災害時と平常時の救済制度の関連を検討する予定である。まずは生活保護法における住宅扶助の在り方を検討する。②については、震災・原発事故から3年以上が経過して、目立った活動が少なくなりつつあるため、調査対象を検討しつつ、理論的な考察を深めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始以前から調査協力者と関係性の構築を図っており、年度当初から調査を実施することができた。調査そのものもスムーズに進行し、成果を同年度中にまとめ学会報告を行えた。 文献収集については、インターネットと図書館、(古)本屋等からの購入で対応できた。また、行政への情報公開請求も積極的に行い、貴重な資料を収集できた。
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今後の研究の推進方策 |
2014(H26)年度当初は、住宅に関心を寄せながら、災害時と平常時の救済制度の関連、特に生活保護法における住宅扶助の在り方を検討し、論文を執筆する予定である。生活保護に加え、生活困窮者に対する新たな支援制度の構築が進められており、その対象には、災害・事故の影響を深刻に受ける社会的弱者が含まれると考える。これらの新しい政策動向にも注目しつつ、調査研究を継続する。 他方で、研究の視野、調査対象を広げるため、過去の被災地域に訪問し合わせて資料収集すること、できれば海外の事例もまず文献収集し、必要であれば調査を実施したいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費について、インターネットと図書館等を活用した資料収集を行ったため、支出が少なくなった。人件費については、資料収集補助等研究補助費として計上した分は、作業が中途であり、次年度支出予定となった。謝金について、行政関係者へのヒアリングなどで費用が発生せず、余剰が生じた。 今年度は、過去の被災地域における図書館、資料館等での文献収集を行うと同時に、必要であれば、海外の文献調査、実地調査も行い、旅費、謝金を支出する。 資料収集補助等研究補助費として計上した分は、作業を継続して依頼中であり、終了次第、支出する。
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