研究課題/領域番号 |
25780344
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
横山 由香里 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (40632633)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ソーシャルネットワーク / 被災地 / 健康 / 東日本大震災 |
研究実績の概要 |
本研究は、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県の沿岸部の住民を対象に、ソーシャルネットワークが人々の健康に及ぼす影響を検討するものである。平成26年度は主に以下の2点の成果があった。 第1に、ソーシャルネットワークと精神健康との関連性を明らかにしたことが挙げられる。平成26年度は、岩手県沿岸の地域住民において、ソーシャルネットワークが乏しい者ほど、精神健康が不良であることが明らかとなった。被災地において、人と人とのつながりを豊饒化させていくことは、住民の健康増進という観点からも重要である。この研究成果は、学術雑誌PLOS oneに投稿しアクセプトされた。 第2に、沿岸地域のコントロール地域となり得る岩手県内陸部での調査に着手したことが挙げられる。岩手県の沿岸部では、ソーシャルネットワークが乏しい状況にあることが懸念されてきた。しかし、他地域と比べて、どの程度の水準にあるのかを実証した調査は行われていない。そのため、岩手県の内陸部の自治体に協力を要請し、内陸部(震災の津波被害がなく、地震被害も限定的であった町)と、沿岸部(津波による被害の甚大な市町)とを比較することを通して、被災地の現状をより明確に描き出すことが求められてきた。 そこで平成26年度は、内陸部の自治体にて住民基本台帳を閲覧し、2200名をサンプリングした。また、内陸部と沿岸部で共通する項目を設けた調査票を作成した。平成27年度は、内陸部でも調査を実施し、沿岸被災地住民のソーシャルネットワーク水準や健康指標との比較を行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、東日本大震災の被害が甚大であった沿岸地域の住民と、被害が比較的少なかった内陸地域の住民のSocial Networkならびに健康状態を比較することを目的としている。 沿岸地域の住民におけるSocial Networkに関する研究は順調に進んでおり、論文化を終えた。 他方で、内陸地域に暮らす住民のSocial Networkについては、平成26年度に実施する予定の調査が平成27年度6月にずれ込んだ。理由の1つには、研究代表者の勤務先が岩手県から愛知県に変更になり、フィールドとの調整や他の研究者との協力体制構築にやや時間を要したことが挙げられる。実施計画はやや遅れているが、調査に向けた準備は順調に進んでおり研究遂行に悪影響を及ぼすものではない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に実施する予定であった調査が若干遅れているが、調査準備は概ね整っており、大きな問題は生じていない。これまでに、岩手県紫波町から住民の住所情報を収集した。また、調査内容について岩手医科大学の研究者とも協議を重ね合意を得ている。 平成27年度は6月に、岩手県内陸部に位置するS町の住民2200名を対象に配票調査を実施し、内陸部と沿岸部の被災地住民間で、Social Networkや健康状態に差が生じているのかを検証する。 さらに、内陸部での調査終了後はデータ分析を行い、国内学会での発表や、国際雑誌への投稿を目指す。また、結果を地域に還元できるよう調査フィールドである岩手県関係者との意見交流も積極的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していた住民調査が平成27年度の実施に変更になった。 そのため、調査に係る予算の一部を平成27年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年6月に、岩手県S町で配票調査を行う。対象者は、20歳以上の地域住民2000名である。調査準備や、データの入力・データクリーニング作業に平成26年度予算の残額を用いる。 また、平成27年度は結果の公表に予算を計上する。学会での情報収集に必要な旅費、参加費、論文投稿に係る予算の使用を予定している。さらに、研究対象地域へ結果を還元するべく、岩手県で行われる関係者会議にも出席する予定である。そのための旅費を計上する。
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