研究課題/領域番号 |
25780344
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
横山 由香里 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (40632633)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / ソーシャルネットワーク / メンタルヘルス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県の住民の健康状態とソーシャルネットワークの関連性を明らかにすることである。特に被害が甚大であった岩手県沿岸部の住民における先行調査が継続されていることから、本研究では、内陸部の住民を対象に調査を行った。 2015年度に、岩手県内陸部に位置するS町にて住民基本台帳からの系統的無作為抽出後、2000名に無記名自記式郵送調査を行った。有効回答率は47.1%であった。 2015年時点での内陸部S町の調査協力者の中には、少数ではあるものの沿岸被災地などからの転居者が含まれていた。また、一部損壊等を含めると約1~2割が家屋被害を経験していた。発災直後の2011年度に岩手県沿岸部で実施された健康調査のデータと比較すると、内陸部に比して沿岸部の健康状態が不良であることが確認された。しかしながら2015年度に沿岸部で実施された健康調査のデータと、本研究(2015年度の内陸部の調査データ)を比較すると、内陸部S町においてメンタルヘルス、不眠症状、健康度自己評価の有所見者割合が多く、ソーシャルネットワークも乏しい状況にあることが確認された。平成25年度の国民生活基礎調査と比較しても、内陸部のS町は有所見者が多いことが示唆される。この背景には、東日本大震災の影響だけでなく地域特性や文化的な要因が考えられるが、本研究ではその理由は分析できなかった。今後は、他の調査も重ねながら、内陸部での健康支援の在り方を検討していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データの収集や分析等、方法論的には順調に進展したが、得られた分析結果が当初の予想と大きく異なっていたため、結果の解釈に時間を要した。 具体的には、「震災被害が甚大であった地域よりも、被害が軽度であった地域の方が健康状態やソーシャルネットワークが不良である」という結果が得られた。その理由を考察するための情報収集に時間がかかり、研究成果をまとめる段階でやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
予想に反して得られた結果を解釈するために、情報収集を行う。情報収集は主に、先行研究のレビュー、調査フィールドに関するヒアリング、公的機関のwebサイトを通じて行う予定である。結果について妥当な解釈ができた段階で、論文としてまとめ発表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の仮説と異なる結果が得られたことから、慎重に考察する必要性が生じた。論文化に先立ち、さらなる情報収集が必要になったことから、情報収集と論文投稿に係る予算の一部を2016年度に繰り越したため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
5月までに情報収集を終え、研究結果についてまとめる。 9月に論文投稿を終える。英語のネイティブチェックなどに助成金を使用する予定である。
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