いくつかの先行調査で、被災者のソーシャルネットワークが少ないことが報告されている。本研究では、申請者が携わっている「被災者コホート」(岩手県沿岸部の被災者約1万人の健康調査)をベースとし、ソーシャルネットワークの推移と関連要因を明らかにすることを目的とした。また、被害の比較的小さかった内陸部にて健康と生活に関する調査を実施し、被災者のソーシャルネットワークにどの程度ダメージが及んでいるのかを明らかにすることを通して、被災者のソーシャルネットワーク再形成に向けた支援策への示唆を得ることを目的とした。 岩手県の2地域で、自記式質問紙調査を実施し、平成28年度はその解析を行った。当初、被害の甚大な地域において、ソーシャルネットワークが減少しているとの仮説をたてていたが、被害が限定的であった内陸地域において、ソーシャルネットワークが乏しいことが明らかになった。あるいは、被害の大きかった沿岸地域では、ソーシャルネットワークは比較的維持されているとも考えられる。先行研究や、現地でのヒアリング等を通して、①内陸地域における健康課題の大きさ、②内陸地域での異動、③被害の大きな地域においてはサポートが得られやすいため、ソーシャルネットワークが維持・回復している可能性が考えられた。 震災から時間が経過することにより、支援やサポート体制が減少した場合、ソーシャルネットワークが減じていく可能性も考えられる。今後の推移を注視してくことが求められる。
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