介護保険制度では、利用者に提供したサービスの結果を記述した記録の重要性が言われ続け、さらに専門職が記述する記録内容には客観性が求められてきた。しかし、介護サービス実践では、専門職が記述する場合に求められる客観とは何かということが示されていないという課題がある。本研究では、記録内容の客観性は、その内容の妥当性を示すプロセスであると考え、それを「専門職の知覚による情報」と「専門的な判断による選択」との関連から検討し、介護サービスにおける専門職の知覚する行為と、情報を判断する行為の基準となる尺度の開発を第1の目的とし、これらの尺度を用いて専門職が記述する記録内容の妥当性を示すプロセスを探ることを第2の目的とした。 本研究では、高齢者福祉関連の国家資格を持つ専門職にフォーカスグループインタビュー調査、介護老人福祉施設の専門職にアンケート調査を実施した。その結果、観察項目、判断項目、記録項目は、それぞれの項目内において一定の関連性が認められるものの、3つの項目が一連のプロセスとして連動していなかった。つまり、記録業務におけるプロセスは、観察行為、判断行為、記録行為を構成する要素が別々に機能していること。さらに、それぞれが別々に機能していることによって、記述内容の曖昧さが生じていることが明らかとなった。 なお、本研究では、観察行為、判断行為、記録行為の尺度と、それら3つの行為尺度についての関連性が明らかっとなった。しかし、記録内容の妥当性を示すモデルの提示までは至っていない。そのため、観察から記録するまでのプロセスを阻害する要因について再調査し概念モデルを提示することが今後の課題である。
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