最終年度である27年度では、豊富な研究蓄積のある海外のホームレス研究と日本のホームレス研究との「違い」を意識しながら、文献・既存統計の収集と読込み・整理・分析を行った。また、分析を進める中で、オーダーメイド調査よりも、既実施の「全国家族調査」の方がより実態に即した分析が可能であると判断し、SSJデータアーカイブ(東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター)よりデータの提供を受け、分析を行った。また、規模の大きい実態調査を今後展開する必要があると判断し、平成27年度の秋より福祉施設退所者を対象とするパイロット調査を開始した。 3年間の研究成果としては、女性や家族の「(広義の)ホームレス」は福祉制度の運用実態を反映する公的統計において「ホームレス」として出現することはほとんどないが、それは女性や家族の「(広義の)ホームレス」が存在しないわけではなく、多様なフィールドでのヒアリングを実施することにより、どのような政策カテゴリーの下で支援(保護)を受けているか/受けていないかを大雑把ではあるが掴むことが出来た。今後は、なぜ日本社会においては女性や家族の「ホームレス」が見えづらいのかを海外比較も踏まえて歴史的文脈から考察することが課題として残された。 研究成果の一部は2015年6月に開催された社会政策学会において報告(社会政策学会第130回大会、お茶の水女子大学)した。また、2016年6月に開催される学会においても研究成果の一部を報告予定である(社会政策学会第132回大会、明治大学)。報告内容はそれぞれ投稿論文としてまとめて行く予定である。
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