研究課題/領域番号 |
25780355
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
神部 智司 大阪大谷大学, 人間社会学部, 准教授 (10342164)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高齢者福祉施設 / 認知症高齢者 / 介護職員 / コミュニケーション / 自己評価 |
研究概要 |
介護職員の「認知症高齢者とのコミュニケーションの質」に関連する文献を収集し、分析を行うとともに、介護職員の「認知症高齢者とのコミュニケーションの質」に対する認識を把握するために、調査協力が得られた近畿地方の介護老人福祉施設(1か所)を訪問して介護職員(3名)を対象に個別インタビュー調査を実施した。収集した文献のレビューにより、コミュニケーションの役割と機能、コミュニケーション・スキル、認知症高齢者とのコミュニケーションにおける留意点などが明らかにされ、そこから介護職員の「コミュニケーションの質の自己評価」の評価尺度の作成に向けた知見の整理につなげることができた。また、介護職員(3名)への個別インタビュー調査では、認知症高齢者とのコミュニケーションの際に留意していること、さらにはコミュニケーションの質に影響を及ぼしていると考えられることなどについて質問した。個別インタビュー調査については今後も継続的に実施し、最終的には10名分のデータを収集するため、現段階では暫定的な結果となるが、収集したデータの逐語録を作成して内容分析を行ったところ、介護職員の個人要因(認知症高齢者の認知能力の把握)のみならず、職場の環境要因(雇用環境、仕事環境、人間関係等)がコミュニケーションの質に影響を及ぼしていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度における研究は、当初の計画どおりおおむね順調に進められているものと考えられる。具体的には、介護職員の「認知症高齢者とのコミュニケーションの質」に関連する文献を幅広く収集してレビューを行い、「コミュニケーションの質の自己評価」の評価尺度の構成概念に関する研究を進めることができた。また、個別インタビュー調査については、文献レビューに時間を要したことや、調査対象施設との日程調整が円滑に進まなかったことなどにより、平成25年度内に計画していたすべての調査(介護職員10名)を実施することができなかったが、平成26年5月末までには終了する予定であることから、今後の研究計画に支障をきたすような遅れではないと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、個別インタビュー調査を完遂させたのち、郵送法による自記式質問紙を用いたアンケート調査の実施に向けた準備を行う。具体的には、介護職員の「コミュニケーションの質の自己評価」に関する質問項目、また、それに関連する個人要因としての「認知症高齢者の認知能力の把握」「専門職としての価値観と態度」および環境要因としての「職場環境に対する認識」に関する質問項目で構成された自記式質問紙を作成し、大阪府下の介護老人福祉施設に従事する介護職員を対象に郵送法によるアンケート調査を実施する予定である。そして、回収されたデータの集計および統計分析を行い、介護職員の「コミュニケーションの質に対する自己評価」の実態、さらには「コミュニケーションの質の自己評価」の関連要因について検証して実証的知見を整理するとともに、調査報告書の作成、さらには論文作成と学会発表を行う。また、地域の団体・組織等に対しても、要請等があれば積極的に成果報告を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
介護職員の「認知症高齢者とのコミュニケーションの質」に対する認識を把握するための施設訪問による個別インタビュー調査について、当初の計画では平成25年度末までに合計10名の調査を完遂させる予定であった。しかし、研究テーマに関連する文献・資料等を広範囲に収集したことでレビューに時間を要したこと、さらには施設訪問による調査の日時調整等による影響もあり、個別インタビュー調査の開始時期がやや遅れてしまい、平成25年度内でのインタビュー調査の実施が3名にとどまった。その結果として、残額(34,794円)が生じることとなった。 平成25年度の残額と合わせた平成26年度の助成金は、まず、平成26年度末までに実施できなかった施設訪問による個別インタビュー調査を継続して実施するための旅費、ならびにインタビュー対象者への謝金等として使用する。次に、介護職員の「認知症高齢者とのコミュニケーションの質の自己評価」とその関連要因について実証的な検討を行うために、大阪府下の介護老人福祉施設の介護職員(1施設あたり3名、合計1,500名程度)を対象に自記式質問紙を用いた郵送法によるアンケート調査を実施する。そのための調査票印刷費や郵送費、回収された調査票のデータ入力補助者への謝金、統計分析のためのソフト購入費、ならびに調査報告書の印刷費および郵送費、そして研究成果について学会大会等で発表するための旅費として使用する。
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