研究実績の概要 |
高齢者福祉施設での認知症ケア実践において、介護職員が認知症高齢者とのコミュニケーション・スキルを向上させるためには「認知症高齢者とのコミュニケーションの質」の自己評価を行うとともに、その関連要因を明らかにすることが求められる。しかし、介護職員の個人要因および職場の環境要因という多角的視点から「認知症高齢者とのコミュニケーションの質」の関連要因について検討を試みた先行研究は皆無に等しい。そこで、平成26年度は介護職員の「認知症高齢者とのコミュニケーションの質」に対する自己評価とその関連要因について明らかにするために、自記式質問紙による郵送調査を実施した。 調査の対象施設は、A府内の介護老人福祉施設(381箇所)であり、1施設あたり4名の介護職員(合計1,524名)を調査対象者とした。調査の実施時期は平成27年2月9日から3月6日までの約1か月間であり、有効回収数は385票であった(有効回収率 25.3%)。調査項目として「コミュニケーション・スキル(23項目)」(西田ら 2007)、「認知症に関する知識量(15項目)」(金ら 2011)、「介護の専門職性(31項目)」(社会福祉専門職研究会 2003)、「労働環境の質(15項目)」(Lee 2003)を設定した。分析方法はコミュニケーション・スキルを従属変数とし、認知症に関する知識量と介護の専門職性、労働環境の質を独立変数、回答者の基本属性(性別、年齢、介護福祉士資格の有無、介護職歴)を調整変数として重回帰分析を行った。なお、本調査は大阪大谷大学文学部・教育学部・人間社会学部研究倫理委員会の承認(第001号)を得て実施した。重回帰分析を行った結果、介護職員の「認知症高齢者とのコミュニケーションの質」を向上させるためには、認知症に関する知識量を増やすとともに、介護の専門職性に対する肯定的な認識を高めることの必要性が示唆された。
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