研究実績の概要 |
これまで,数多くの研究によって,特性的楽観性(以下,“楽観性”)がパフォーマンスの高さや精神的・身体的健康と結びつくことが示されている(Carver et al., 2010)。その理由として,楽観性の高い人が接近的な目標の追求を行っているためと考えられてきた(Segerstrom, 2007)。ところが近年,楽観性の高い人が常に接近的な目標追求を行っているのではなく,取り組むべき目標が自身にとって重要であったり優先順位が高いと認知した時のみそうであることが明らかになっている(Geers et al., 2009;外山,2014)。 ところで,goal-shielding理論(Shah, Friedman, & Kruglanski, 2002)では,“重要な目標が活性化されると,代替的な目標(その重要な目標とは無関連な目標)の活性化が自動的に抑制される”と提唱している。そして,この代替的な目標に対する認知的な抑制が,目標達成のプロセスにおいて重要な役割を果たすと考えている。 平成27年度は平成26年度に引き続いて,重要な目標が活性化されると,代替的な目標の活性化が抑制されるというgoal shielding効果において,楽観性が調整変数として働いているのかどうかを検討した。その結果,楽観性の高い人は低い人に比べて,重要な目標が活性化された際に,代替的な目標の活性化がより抑制されることが示された。本研究の結果は,楽観性の高い人が重要な目標に対して積極的に取り組むことができるのは,代替的な目標の活性化の抑制が働いていることに起因している可能性を示唆するものである。 また,平成27年度は,次年度以降の研究を見据えて,楽観性と悲観性を独立に測定できる“子ども用楽観・悲観性尺度”を新たに作成し,それらの信頼性・妥当性を検討した。
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