研究課題
平成25年度には、意識的な情報接触と無意識的な情報接触による影響の違いについて、閾下呈示と閾上呈示という情報入力における意識性、潜在指標と顕在指標という反応における意識性という、多層的な枠組みの中で検討した。特に、意識と無意識で矛盾した情報が入力される場合、潜在指標と顕在指標でそれぞれ反応が分離し、意識と無意識は本質的に独立したシステムとして機能することを明らかとした。平成26年度には、前年度の多層的な枠組みを考慮に入れた上で、より日常的な情報接触の影響を検討した。特に、死を連想させる単語を繰り返し閾下で呈示することによって、握力の増大という身体的反応に影響が現れることを明らかとした。すなわち、ネット上の掲示板などで散見される攻撃的な情報は、繰り返し接触することで、認知的な影響にとどまらず身体反応というより直接的な社会的影響を持つ可能性が示唆された。そして、平成27年度には、これまで未検討であった意識と無意識という二つの情報処理システムの処理特性を明らかとすることを目的に、二つの実験研究を行った。第一に、ある画像を閾下呈示する前に、言語的教示によって画像に関する構えを形成した。その結果、実際に呈示する画像と言語的な教示が不一致の場合、潜在指標においては実際に呈示された刺激に基づく反応が現れる一方、顕在指標においては教示によって形成されたイメージに基づく反応が現れた。すなわち、意識はイメージに基づいた処理を担い、無意識はより現実に基づいた処理を担うことが示唆される。第二に、形容詞と表情という言語情報と画像情報が矛盾するようペアを組み、閾上あるいは閾下で呈示したところ、閾上呈示された場合には言語情報に基づいた反応、閾下呈示された場合には画像情報に基づく反応が現れた。すなわち、意識は言語的な情報に、無意識は画像情報に鋭敏であることが示唆される。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Imagination, Cognition and Personality
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