研究実績の概要 |
本研究は,集団間紛争における集団内力学の影響の解明を目指すことを目的とするものである。これまでの申請者の一連の実験結果は,内集団からの賞賛獲得という高い集団内評判を求めて代理報復が行われることを示した。この集団内評価の力学は,代理報復のみならず,集団間紛争一般に影響すると考えられる。そこで,特に,集団内評判の視点から,賞賛獲得と排斥回避の影響をそれぞれ検討した。 賞賛獲得の効果として,集団間攻撃者への賞賛と,実際の集団間攻撃が関連しているかを検討するために, 人類学領域で用いられる比較文化データベースを元に文化レベルの関連性を検討した。その結果,戦士への賞賛は戦争の頻度と高い関連が見られた。また,男らしさを重視する名誉文化が,戦士への賞賛を経由して,戦争の頻度を高めるという関連も見られた。この成果は,日本心理学会第79回大会(名古屋国際会議場)で発表を行い,現在論文執筆中である。 また,排斥回避の効果として,日中関係を題材に日中両国民を対象に質問紙調査を行った。 個人の対日態度と比較して,他の中国人の対日態度推測は非好意的なものであり,その結果,中国人は人前で日本への好意的態度を表明しないことが示された。逆に,日本ではそのような効果は見られなかった。“反日”的な社会規範が強い中国だからこそ,こういった効果が見られたと考えられる。この内容は昨年度にthe 28th International Congress of Applied Psychology (Paris, France)にて発表を行い,本年度に論文投稿を行い,現在審査中である。
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