近年、より早期からのキャリア教育の重要性が指摘され、学校現場を中心に推進されてきた。また子どもにとっては、家族などの身近な人間関係を通して職業情報を得る機会も多い。一方で、職業に関する情報を獲得させる役割が相対的に大きいといわれるメディアの影響については十分に検討されてこなかった。そこで本研究では、もっとも身近なメディアのひとつであるテレビ視聴が子どもの勤労観や働くことに対する価値観にどのような影響を及ぼすのかを検討した。 初年度は高校生を対象としたweb上での縦断調査を実施した。分析の結果、テレビ視聴が多いほど勤労観が低下する傾向があることや、ドラマ視聴が多いほど働くことに対する価値観のひとつである「活動志向」が高まる傾向がみられた。また、学校や家庭における職業や仕事に関する情報への接し方によってメディアの影響は異なる可能性が示唆された。 次年度は中学生・高校生・大学生を対象とした縦断調査を実施した。分析の結果、学校や家庭でのキャリア教育やテレビ視聴の影響は年齢や性別によって異なり、学校でのキャリア教育に積極的に取り組むことが、高校生男子において職業モラトリアムを低下させる効果をもつことや、テレビ視聴が中学生男子の働くことに対する価値観への期待を高める一方で、中学生女子では期待が低まることなどが明らかになった。 最終年度は、ドラマの中で描かれる勤労観や働くことに対する価値観について内容分析を行った。縦断調査の結果に基づき、中学生・高校生からの視聴率が高かった53本のドラマを選出し、主要な登場人物が持つ勤労観や働くことに対する価値観について分析を行った。そのような描写がないものが多かったものの、描写がある場合には、「他愛性・自律性・能力活用・達成」に対して肯定的な価値観を持つよう描写されていることが多かった。また、ある価値観に対して否定的な考えを示す描写はほとんどみられなかった。
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