動機づけによる目標表象の活性化という現象についてさらに検討を進める上では、大きいサンプルサイズを確保しながら、目標活性にかかわる個人差要因を測定し、動機づけ操作との関係を分析することが重要であると考えられる。この目的のため、300人を対象としたインターネット調査を行った。 本調査では、性別や年齢などの人口統計学的要因や目標活性と関連する心理変数について測定した上で、動機づけの操作を行い、その後に「これから1年間で取り組もうと思う目標」について自由にリストするように求めた。動機づけの操作としては、自分にとっての理想あるいは義務について記述を求めるという自己記述課題を用いた。 その結果、「理想について考えた促進焦点下では、義務について考えた予防焦点下よりも想起される目標の数が多い」という効果は見られなかった。回避動機の強い人や女性では目標記述数が多かったことから、本調査での目標記述数はまじめさや課題への動機づけの高さを反映していた可能性がある。 ただし興味深いことに、動機づけの操作による新たな調整効果がみられた。ポジティブ感情を強く感じる人ほど、リストされた目標の数が多くなるという傾向がみられたが、条件間で目標数を予測する感情の種類が異なっていた。即ち、促進焦点下では快活が目標数を予測するのに対し、予防焦点下では安心が目標数を予測していた。動機づけの操作後に、それに対応するポジティブ感情を経験することは現状がうまくいっていることのシグナルとして機能し、多くの目標が想起されやすかった可能性が考えらえる。
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