研究課題
平成26年度は、下記の調査・実験を行った。1)社会的文脈における自己制御の発達的変化を検討するため、昨年度調査に協力してもらった中学1年生(本年度の調査実施時は中学2年生)とその担任教師を対象に質問紙調査を実施し、縦断データを収集した。また、昨年度の中学生対象の横断データをもとに、自己制御育成にかかわる諸要因の検討を行ったところ、親の養育やしつけの肯定的影響は中学1年時でのみ確認され,2年,3年時では確認されなかった。一方で,友人や教師の影響は学年を通して確認された。中1ギャップの背景にある環境移行時のストレスへの適応や対人葛藤の解決を促す自己抑制能力を高めるために、教師による子どもへの配慮が有効である可能性が示唆された。2)集団内で発揮される自己制御について検討するため、大学生を対象とした小集団実験を行った。昨年度のデータでは、小集団を形成するメンバーが知人同士であったため、本年度は、大学新入生を対象に4月に実施することで、事前に相互作用がないメンバー同士で小集団を構成した。当該データについては現在分析・考察を進めている最中であるが、昨年度、基礎的データとして収集したデータをもとに、社会的感受性および自己制御と幸福感との関連を検討したところ、a)実際の他者感情を読み取る程度と、その自己認知は必ずしも一致しないこと、b)社会的感受性と自己主張が共に高い場合に人生満足度が高く、2つの機能の高さは、良好な対人関係の構築と維持に繋がることで人生満足度を高める可能性があることなどが確認された。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に引き続き、中学生を対象とした調査を続行することでき、2年間の縦断データを収集できた。また、大学生を対象とした基礎的データの分析および、昨年度の改善点を踏まえた小集団実験を実施できたことから、おおむね当初の予定通り研究が進んでいるといえる。
社会的文脈における自己制御の発達的変化の検討については、平成27年度も同一対象者に引き続き質問紙調査を実施することで、3年間の縦断データを得られる見込みである。集団内で発揮される自己制御の検討については、産休・育休終了後に、最終的な実験を行い、ビデオや音声データ等の客観的指標をもとにしたデータ分析を実施する予定である。
当初、26年度後期にもう一つ実験を実施することを予定していたが、研究代表者の妊娠が判明したため、産休・育休明けに実験を実施することとした。そのため、実験実施に伴う人件費・謝金分の費用が残った。
残金は、産休・育休明けに実施する実験の謝礼およびデータ入力補助等の人件費として使用する予定である。
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International Review of Social Psychology
巻: 28 (1) ページ: 125-152
モチベーション研究
巻: 3 ページ: 2-6