研究課題
H29年度は,集団内で発揮される自己制御を検討するため、大学1年生を対象に、集団実験を行った。5,6名のメンバーから構成される小集団パフォーマンスに対して、個人の社会的感受性(他者の感情を読み取る能力)や自己制御がどのようにかかわっているのかを検討したところ、社会的感受性や自己制御の集団平均値がともに高いグループほど、集団パフォーマンスも満足度も高いといった結果が示された。社会的感受性や自己制御の集団平均値は,役割分化や目標共有の時期を早めることで優れた集団パフォーマンスに繋がるといった,媒介変数に関する検討も行ったが,役割分化や目標共有の早さは媒介しておらず,媒介変数の特定には至らなかった。媒介変数については明らかにならなかったものの,日本においてもメンバーの社会性が集団パフォーマンスと関連することを示した点,またメンバーの社会的感受性だけでなく自己制御もともに集団パフォーマンスと関連していることを示した点は,今後の集団研究において重要な意味を持つと考えられる。また,これまでの研究成果全体を通じて,青年前期における自己制御の発達的変化(中学1~3年にかけて自己主張や自己抑制は直線的に上昇し,とりわけ中学1年時はエージェントとの温かい関りが重要であること等が明らかにされた)や,地域・学校・家庭といった多層的な環境要因が自己制御に与える影響(親,地域住民,教師との相互作用が子どもの自己抑制に対し相乗的にポジティブな影響を与え,社会化エージェントの一貫した指導が有効である可能性等が示唆された),集団内で発揮される自己制御(メンバーの自己制御や社会的感受性が集団パフォーマンスに関与していること等が確認された)の一端が明らかとなり,社会的文脈における自己制御の総合的な理解に貢献する知見が収集できたと考えられる。
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東海心理学研究
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