研究課題/領域番号 |
25780381
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
村山 綾 関西学院大学, 文学部, 受託研究員 (10609936)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 裁判員制度 / 公正世界信念 / 評議コミュニケーション |
研究実績の概要 |
当該年度は、研究経過に沿って評議実験を実施し、一部結果を学会で発表した。また、一般市民の法的判断プロセスに注目した研究も実施した。 これまでに社会心理学的研究で得られた知見を用い、評議を始める前の段階で、裁判官が(1) 公判で得られた裁判員の知識の体制化をストーリー型でおこなうように働きかけ、(2)個別に情報を整理する時間や法律の解釈について質疑応答の時間を設定し、(3)評決に際して重要な情報を裁判員と積極的に共有することで、評議の流れの理解や裁判員の実質的参加を促進させる可能性について検討した。大学生4名、専門家役の弁護士1名の5名集団(合計8集団)を対象に実験を行った結果、専門家がより重い判断(殺人罪)を主張する場合は、評議手法を適用した方が判決の満足度が高くなることが示された。また、専門家がたとえ意図しておらずとも、専門家が自らの意見を述べた後に、非専門家の意見がそれに影響されることも合わせて示した。今後、得られた発話データを詳細に分析し、その背景要因を明らかにする必要があるが、非公開となっている評議でどのようなコミュニケーションが行われているのかを理解するために重要なデータを収集することができた。 前年度に引き続き検討している公正世界信念(因果応報的な考え方)を対象とした質問紙実験も行った。そして、過去に犯罪を犯した人物が不運に遭った場合、人はそれを「当然の報い」だと考える一方、幸運を得た場合には「将来的に悪いことが起こるだろう」というような推論を行うことが示された。これらの結果は、刑事事件の加害者に対する一般市民の判断傾向の一端を示した点で重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算等の関係から、評議集団の構成人数を少なくするなど変更点はいくつかあったものの、当初の予定通り評議に関わる実験と一般市民の法的判断プロセスに関わる質問紙実験を実施することができた。ゆえに、研究目的はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は得られた発話データを文字化し、それらを分析する予定である。文字化やコーディングに関わる人員はすでに確保しているため、研究目的の達成に向けておおむね順調な進捗を予定している。
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