本研究の目的は、育児期の女性の就労移行のプロセスに関わる心理社会的要因を明らかにし、育児期に離職し専業主婦となった女性が再就職を実現するために必要な具体的な心理社会的サポート要因を明らかにすることであった。そのため、育児と就労の関連からフォーカスグループを作成し,インタビュー調査による質的な検討から就労の促進要因と阻害要因を検討し質問項目を作成し、質問紙調査によってさまざまな要因との交互作用を量的調査によって検討した。 インタビュー調査は,既に子どもが成人して子育てがひと段落した母親と、現在末子が小学生未満の子どもを育児中の母親の2世代で、育児期に就労継続、離職し再就職、離職し専業主婦の3タイプの計6つフォーカスグループに設定し、各3~4名、合計20名に90分の個別の半構造化面接を実施した。その結果、就労継続の促進要因として実家の経済的な状況、奨学金の利用、経済的自立を促す養育態度、実家との同居を含む近隣での住環境、実家からの家事・育児サポートなどの要因が挙げられた。一方、再就職の阻害要因としては、夫の転勤などの物理的な要因だけでなく、離職期間が長くなると、以前の職業スキルが通用しないことへの精神的不安の要因も挙げられた。さらに母親が就労で、家族や子どもに不便な思いをさせてくないという意見などが挙げられた。 上記のインタビュー結果から質問項目を起こし、WEB調査を実施した。対象者は現在未就学児を持つ育児期の母親で、キャリアパターンが継続群315名、再就職群308名、専業主婦群317名の合計941名から回答を得た。分析の結果、専業主婦群では、継続・再就職群に比べ、人からサポートに対する「受援力」得点の平均値が低く、また夫が仕事で評価されてほしい、夫が仕事に専念できるようサポートしているという項目、また性役割分業意識が有意に高ことが示された。
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