パーソナリティ特性の発達と健康の変化を統合的に理解するための縦断調査研究

2013 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 25780387
• 研究種目: 若手研究(B)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 高橋 雄介 京都大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (20615471)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: パーソナリティ特性 / 身体的健康 / 社会的健康 / 精神的健康 / 縦断調査

研究概要

健康は老若男女問わず私たち人間にとって普遍的な問題であり，Nature誌による「社会科学が取り組むべき10 の課題」の筆頭にも，健康の問題が掲げられている(Giles, 2011)。世界保健機関(WHO)の定義によると，健康とは，「身体的にも精神的にも社会的にも安寧な状態にある」ことを指す。
急速な勢いで進行する現代の超高齢化社会において，身体的な健康の維持および増進させるための個人的な要因として，何が必要とされるのか。近年，パーソナリティ特性は，問題行動や精神病理的な症状をはじめとする心理学的な変数以外にも，寿命や身体的な健康などの社会疫学的な変数に対しても有意な予測力を持つことが示されている(Heckman, 2006; Robert et al., 2007; 高橋他, 2011)。
しかしながら，これまでに発達パーソナリティ心理学の見地から健康科学に対して提供されてきた知見にはいくつかの限界点が見受けられる。よって，それらのいくつかの限界点を乗り越えて，パーソナリティ特性と身体的・精神的・社会的健康の関連性の全体像を把握するための新たな知見の蓄積を開始した。本研究課題は，科学研究費・研究スタート支援の2年間の研究の後を受け，さらなる縦断研究を実施すべく，継続して調査研究を行い，より付加価値の高いデータ収集およびデータ分析を目指すものである。
とりわけ，平成25年度においては，まず，3時点目の縦断データを取得し，曲線的な変化に関する検討にも耐えうるデータ分析が可能となり，また，これらに関する成果を国際学会発表(3件)，国内学会発表(6件)，国内招待講演(3件)において行った。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた論文出版計画よりも，若干の遅れがあるものの，投稿中の論文原稿は複数あるため，これらについて，できる限り早く適切に研究業績としてまとめることができるように努力する。また，平成25年度の調査においては，1,000人規模のオンライン調査を実施し，縦断データセットは順調に構築されつつある。平成26年度以降の研究において，これらのデータについて分析を進める予定である。

今後の研究の推進方策

現状において，本研究計画については，後ろ向きな計画変更の予定は無い。ただし，これまでに取得したデータの分析から，本研究計画に記したものにそぐわない結果が得られた場合には，ターゲットとするパーソナリティ特性を適切に限定したり年齢層を制限したりするなどして，研究の効率的な遂行を妨げることのないように工夫・配慮を行う。また，必要に応じて，発達心理学・健康心理学・心理統計学など複数の領域の専門家に知識提供を仰ぐことによって研究の進行停滞を防止する。

次年度の研究費の使用計画

調査費用が当初の予定よりも安価で済んだため，若干の余剰額が発生した。
次年度においては，被調査者数を増やすなどの対応をして，本年度余剰分をそれに充当したい。

研究成果

• [雑誌論文] Longitudinal correlated changes in conscientiousness, preventative health-related behaviors, and self-perceived physical health (2013)
  • 著者名/発表者名: Takahashi, Y., Edmonds, G. W., Jackson, J. J., & Roberts, B. W.
  • 雑誌名: Journal of Personality 巻: 81 ページ: 417-427
  • DOI: 10.1111/jopy.12007
  • 査読あり
• [雑誌論文] Depression and interpersonal stress: The mediating role of emotion regulation (2013)
  • 著者名/発表者名: Moriya, J., & Takahashi, Y.
  • 雑誌名: Motivation and Emotion 巻: 37 ページ: 600-608
  • DOI: 10.1007/s11031-012-9323-4
  • 査読あり
• [雑誌論文] Two Cohort and Three Independent Anonymous Twin Projects at the Keio Twin Research Center (KoTReC) (2013)
  • 著者名/発表者名: Ando, J., Fujisawa, K. K., Shikishima, C., Hiraishi, K., Nozaki, M., Yamagata, S, Takahashi, Y., Ozaki, K., Suzuki, K., Deno, M., Sasaki, S., Toda, T., Kobayashi, K., Sugimoto, Y., Okada, M., Kijima, N., Ono, Y., Yoshimura, K., Kakihana, S., Maekawa, H., Kamakura, T., Nonaka, K., Kato, N., & Ooki, S.
  • 雑誌名: Twin Research and Human Genetics 巻: 16 ページ: 202-216
  • DOI: 10.1017/thg.2012.131
  • 査読あり
• [雑誌論文] Bidirectional influences between maternal parenting and children’s peer problems: A longitudinal monozygotic twin difference study (2013)
  • 著者名/発表者名: Yamagata, S., Takahashi, Y., Ozaki, K., Fujisawa, K. K., Nonaka, K., & Ando, J.
  • 雑誌名: Developmental Science 巻: 16 ページ: 249-259
  • DOI: 10.1111/desc.12021
  • 査読あり
• [雑誌論文] レポート評価におけるルーブリックの開発とその信頼性の検討 (2013)
  • 著者名/発表者名: 松下佳代・小野和宏・高橋雄介
  • 雑誌名: 大学教育学会誌 巻: 35 ページ: 107-115
  • 査読あり
• [学会発表] ふたごの育児を行う母親の抑うつの発達軌跡 (2014)
  • 著者名/発表者名: 高橋雄介
  • 学会等名: 日本発達心理学会第25回大会
  • 発表場所: 京都大学
  • 年月日: 20140321-20140323
• [学会発表] 青年期のBig Five パーソナリティ特性と問題行動傾向の関連 (2014)
  • 著者名/発表者名: 高橋雄介，畑野快
  • 学会等名: 日本発達心理学会第25回大会
  • 発表場所: 京都大学
  • 年月日: 20140321-20140323
• [学会発表] Utrecht-Management of Identity Commitments Scaleを用いたアイデンティティ・ステイタスの発達的変化の検討－青年期前期・中期・後期の青年を対象とした横断調査から－ (2014)
  • 著者名/発表者名: 畑野快，杉村和美，高橋雄介，溝上慎一
  • 学会等名: 日本発達心理学会第25回大会
  • 発表場所: 京都大学
  • 年月日: 20140321-20140323
• [学会発表] Longitudinal correlated changes in parental relationship and depression among Japanese adolescents (2014)
  • 著者名/発表者名: Tanaka, M., & Takahashi, Y.
  • 学会等名: 15th Society for Research on Adolescence Biennial Meeting
  • 発表場所: Austin, TX, USA
  • 年月日: 20140320-20140322
• [学会発表] パーソナリティ特性研究の高等教育研究への展開 (2013)
  • 著者名/発表者名: 高橋雄介
  • 学会等名: 名古屋大学高等教育研究センター第119回招聘セミナー
  • 発表場所: 名古屋大学
  • 年月日: 20131115-20131115
  • 招待講演
• [学会発表] 社会科学・健康科学における行動遺伝学研究の位置付け (2013)
  • 著者名/発表者名: 高橋雄介
  • 学会等名: 新学術領域研究「現代社会の階層化の機構理解と格差の制御：社会科学と健康科学の融合」第4回定例研究交流会シンポジウム
  • 発表場所: 東京大学
  • 年月日: 20131026-20131026
  • 招待講演
• [学会発表] 発達や変化の軌跡をモデリングする (2013)
  • 著者名/発表者名: 高橋雄介
  • 学会等名: 日本パーソナリティ心理学会第22 回大会
  • 発表場所: 江戸川大学
  • 年月日: 20131012-20131013
  • 招待講演
• [学会発表] パーソナリティ特性と抑うつの関連に関する潜在クラス分析 (2013)
  • 著者名/発表者名: 高橋雄介，宮崎慧
  • 学会等名: 日本心理学会第77 回大会
  • 発表場所: 北海道医療大学
  • 年月日: 20130919-20130921
• [学会発表] 自己効力感の変化が自己調整学習方略の変化に与える影響―潜在差得点モデルを用いた検討 (2013)
  • 著者名/発表者名: 畑野快，高橋雄介，溝上慎一
  • 学会等名: 日本教育心理学会第55回大会
  • 発表場所: 法政大学
  • 年月日: 20130817-20130819
• [学会発表] Mean-level changes in big five personality traits: Evidence from Japan (2013)
  • 著者名/発表者名: Takahashi, Y. & Brent W. Roberts
  • 学会等名: 121st APA Annual Convention
  • 発表場所: Honolulu, HI, USA
  • 年月日: 20130731-20130804
• [学会発表] Long-term genetic effects of working memory on cognition and personality in adolescence and adulthood: A 14-year longitudinal study of twins (2013)
  • 著者名/発表者名: Ando, J., Shikishima, C., Kijima, N., Yoshimura, K., Yamagata, S., Takahashi, Y.
  • 学会等名: 43rd Annual Meeting of the Behavior Genetics Association
  • 発表場所: Marseille, France
  • 年月日: 20130628-20130702
• [学会発表] パーソナリティと精神的健康の発達行動遺伝学 (2013)
  • 著者名/発表者名: 高橋雄介
  • 学会等名: 思考と行動判断の双生児研究: その現状と展望
  • 発表場所: 慶應義塾大学
  • 年月日: 20130519-20130519
  • 招待講演
• [図書] 発達心理学事典 (2013)
  • 著者名/発表者名: 高橋雄介（分担執筆）
  • 総ページ数: 2
  • 出版者: 丸善出版
• [図書] 縦断データの分析II: イベント生起のモデリング (2013)
  • 著者名/発表者名: 高橋雄介（分担翻訳）
  • 総ページ数: 37
  • 出版者: 朝倉書店
• [備考] 高橋 雄介 (TAKAHASHI, Yusuke) 特定助教
  • URL: http://www.educ.kyoto-u.ac.jp/cogpsy/member/takahashi.html