研究課題/領域番号 |
25780388
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 威 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (60636942)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高齢期 / 加齢 / 感情 / 感情調整 / 発達 / 縦断研究 / 実験 |
研究概要 |
高齢期には、病気や障害、死別といった喪失を経験する一方、加齢につれて肯定的感情は高く、否定的感情は低くなるという逆説的な現象が知られている。この現象を説明する仮説として、高齢者は感情状態を向上させるよう発達すると考える仮説がある。既存の実験は、高齢者が若年者より感情調整を行うことを報告してきた。しかし、実験で短期的に観察された感情調整が、中長期的に日常の感情状態に影響しているか、加齢に伴う喪失の中で発達するかは未検討である。本研究は、縦断調査と実験を行い、以上の課題に取り組み、高齢期における感情発達を明らかにすることを目的としている。 本研究では、2つの課題に、2つの異なる方法を用いて取り組む。2つの課題とは、1)高齢期における感情調整の発達が感情状態を向上させるという仮説、および2)加齢に伴う認知的資源の低下の中でも感情調整は発達するという課題である。そしてこれらの課題を、時間的スパンと方法論の異なる2つの方法によって検証する。具体的には、1)既存の共同研究の一部の対象者に3年間の縦断調査を行うとともに、2)新規に募集する対象者に実験および日誌法による1週間の縦断調査を行う。 平成25年度は、既存の共同研究の一部に関して、兵庫県都市部在住の72歳から74歳の高齢者(追跡参加者195名(追跡率77.7%)、新規参加者45名)を対象に、公民館・生涯学習センターに招待する会場調査を行った。さらに、追加調査として大学生157名を対象に質問紙調査を行った。また、実験課題の作成に向けて、高齢者17名および若年者16名に肯定的あるいは否定的感情を喚起させる画像120枚に対する評価を求め、その評価の年齢差を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、縦断調査と実験の2つの方法から成る。縦断調査は、研究費支給期間3年間で、年度毎に70歳代、80歳代、90歳代の各年齢群を対象にした調査を実施する計画である。初年度は70歳代を対象にした調査を終え、年度末時点でデータ入力を終えた。このことから、初年度の目標は、当初の研究計画を通りに達成されたと判断した。現在、データクリーニングを行い、分析可能なデータセットを整備中である。 実験については、感情調整の実験課題に焦点を絞り、刺激セット選定のために予備実験を行った。当初の研究計画では、実験課題を作成することが目標であったため、現在、実験課題作成に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、本研究は、縦断調査と実験の2つの方法から成る。縦断調査は、26年度に80歳代、27年度に90歳代の各年齢群を対象に、引き続き調査を実施する計画である。 実験については、研究計画を変更する。当初の計画では、複数の実験課題を作成することを検討していたが、1つの実験課題に焦点を絞ることにした。さらに、実験課題の作成に向け、認知課題作成の技術を有する研究員を雇用することにした。目標の選択と人員の補償という対応策により、今後実験による仮説の検証についても推進していく予定である。
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