研究課題
高齢期には、病気や障害、死別といった喪失を経験する一方、加齢につれて肯定的感情は高く、否定的感情は低くなるという逆説的な現象が知られている。この現象を説明する仮説として、高齢者は感情状態を向上させるよう発達すると考える仮説がある。既存の実験は、高齢者が若年者より感情調整を行うことを報告してきた。しかし、実験で短期的に観察された感情調整が、中長期的に日常の感情状態に影響しているか、加齢に伴う喪失の中で発達するかは未検討である。本研究は、縦断調査と実験を行い、以上の課題に取り組み、高齢期における感情発達を明らかにすることを目的としている。本研究では、2つの課題に、2つの異なる方法を用いて取り組む。2つの課題とは、1)高齢期における感情調整の発達が感情状態を向上させるという仮説、および2)加齢に伴う認知的資源の低下の中でも感情調整は発達するという仮説である。そしてこれらの課題を、時間的スパンと方法論の異なる2つの方法によって検証する。具体的には、1)既存の共同研究の一部の対象者に3年間の縦断調査を行うとともに、2)新規に募集する対象者に実験および日誌法による1週間の縦断調査を行う。平成26年度は、既存の共同研究の一部に関して、兵庫県都市部在住の82歳から84歳の高齢者(追跡参加者名(追跡率%)、新規参加者名)を対象に、公民館・生涯学習センターに招待する会場調査を行った。さらに、調査参加者58名に対して1週間に渡る日誌法調査を行った。また、感情を喚起させる画像を用い、感情調整を測定する実験課題を作成した。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、縦断調査と実験の2つの方法から成る。縦断調査は、研究支給期間3年間で、年度毎に70歳代、80歳代、90歳代の各年齢群を対象にした調査を実施する計画である。初年度は70歳代を対象にした調査を終え、本年度はそのデータセットを作成するとともに、80歳代を対象にした調査を終え、データ入力中である。このことから、2年目の目標は、当初の計画通りに達成されたと判断した。現在、データクリーニングを行い、分析可能なデータセットを整備中である。実験については、実験課題作成を終えた。現在、若年者を対象にした予備実験に取り組んでいる。さらに、高齢者を対象にした日誌法による予備調査を実施し、現在分析可能なデータセットを整備中である。
上記の通り、本研究は、縦断調査と実験の2つの方法から成る。縦断調査は、27年度に90歳代を対象に、引き続き調査を実施する計画である。また、実験については予備実験を行うとともに、実験と日記調査を併用した本実験を若年者と高齢者を対象に実施する計画である。
当初の研究計画では、予備実験を行う予定だったが、実験課題作成に時間がかかったため、予備実験を行わなかった。そのため、謝金が予定よりも少なくなった。
予備実験の謝金として使用する予定です。
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Journal of Dentistry
巻: 43 ページ: 342-349
10.1016/j.jdent.2014.12.011
ジェロントロジー研究報告
巻: 11 ページ: 90-97