本研究では、加齢に伴い肯定的感情は高く、否定的感情は低くなるという現象の背景にあるメカニズムを解明するため、縦断研究および実験研究を行った。縦断研究では、感情調整の発達が感情状態を向上させるという仮説を検証した。3年間の追跡調査の結果、高齢期には感情調整に顕著な発達は見られない一方、感情調整の変化は肯定的感情の変化を予測することが示唆された。実験研究では、認知機能が低下しても感情調整は発達するという仮説を検証した。高齢者と若年者を比較した結果、若年者と高齢者はともにネガティブ画像よりもポジティブ画像を選好する傾向があること、高齢者は若年者よりも生起した感情を調整しうることが示唆された。
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