研究課題
若手研究(B)
表示規則とは、どのような場面でどのように情動を表出すべきかといった情動表出に関するルールのことである(Ekman & Friesen, 1969)。本研究では、言語表出の調整という側面に着目し、多様な場面を含む言語的な表示規則の発達過程を検討することを目的としている。平成25年度は、大学生を対象とした予備調査と小学生を対象とした本調査を予定していたが、実際には、大学生を対象とした予備調査と、中学生および発達障害児を対象とした予備調査を実施した。大学生を対象とした予備調査では、P-Fスタディを修正した質問紙を用いて、言語表出が調整されやすい場面を選定した。P-Fスタディは、絵画を用いた場面構成で、フラストレーション時における対人的発話を調べ、その反応を分析し、攻撃性の方向と型からその人の性格を診断する質問紙形式のテストである(林, 2007)。予備調査の結果、P-F スタディで用いられている場面では情動をそのまま言語表出することは少なく、全体的に言語表出が調整されやすい場面であるということが示唆され、言語的な表示規則を検討するための課題として、P-F スタディを修正した課題の有効性が示された。また、特に言語表出が調整されやすいと考えられる6場面について分析し、少なくとも2つの調整パターンを確認した。また、中学生を対象に、言語的な表示規則の1つである「謝罪」を抑制する要因を検討する質問紙調査を実施した。その結果、様々な要因の存在が示唆された。さらに、発達障害児を対象に、言語的な表示規則の発達に関わる認知能力を測定する予備調査も実施した。得られたデータについては現在分析を進めている。これらの成果は、今後の研究を進める上での基礎的データとして重要な成果であり、新たな研究可能性についての示唆を得ることができたという点でも意義のある成果であるといえる。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、大学生を対象とした予備調査を実施できたことと、予定していた小学生を対象とした調査は実施できなかったものの、予定していなかった中学生および発達障害児を対象とした調査を新たに実施することができたことから、おおむね順調であるといえる。
予備調査で得られた結果を踏まえて小学生を対象に調査を実施し、発達過程を明らかにしていく。必要に応じて、幼児や中学生を対象とした調査も実施する。
実施計画に多少の変更が生じたため消耗品などを購入予定
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