研究実績の概要 |
表示規則とは、どのような場面でどのように情動を表出すべきかといった情動表出に関するルールのことである(Ekman & Friesen, 1969)。本研究では、言語表出の調整という側面に着目し、多様な場面を含む言語的な表示規則の発達過程を検討することを目的としている。これまで、成人と、定型発達の小学生、および、発達障害のある小中学生を対象に、P-Fスタディを修正した課題を用いて調査を実施してきた。平成28年度は、定型発達の小学生と自閉症スペクトラム障害のある小中学生を対象とした同様の調査を継続して実施し、各学年の発達的特徴を明らかにすることと、発達障害児との比較を通してその特徴を明らかにすることを目的とした。得られたデータのうち、自閉症スペクトラム障害のある児童のデータを分析した結果、P-Fスタディにおいてフラストレーション場面でどの程度一般的な反応をするかをみるための指標であるGCR(Group Conformity Rating)(%)の平均値が内心よりも発言で高かったことから、フラストレーション場面において内心をそのまま表出するのではなく、言語表出をより適切に調整していることが明らかになった。また、反応として、内心で言い訳をしながら素直に謝罪する反応や、内心では不満に思いながらも相手を許容する反応などがみられた。この成果は、自閉症スペクトラム障害のある児童が場面に応じたコミュニケーションを行っていることを示す貴重な成果であるとえる。現在、定型発達児の追加データについても分析を進めており、言語的な表示規則の発達過程の詳細をさらに明らかにしていく予定である。
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