研究課題/領域番号 |
25780396
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
岸本 健 聖心女子大学, 文学部, 講師 (20550958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 指さし / 幼児 / 母親 / 語彙量 |
研究概要 |
1歳齢児による指さしが言語発達に結びつく条件を解明するために,平成25年度は,1歳齢児が指さしを介し,どのようにコミュニケーションを行っているかを実験的に検討した。特に平成25年度では,親子間の多様な指さしを観察できるよう,実験室をポスターや玩具などで装飾し,その室内での親子間のコミュニケーションを観察した。その結果,自然観察や通常の家庭訪問によって親子のコミュニケーションを検討した課題と比較してたくさんの指さしを親と子それぞれから観察することができた。数多くの指さしをサンプリングできたことで,指さしを「指さしに発声が伴っていたかどうか」や「左右のうちのどちらの手によって指さしを行っていたか」などによって分類することが可能となり,指さしに関連するどういった要因が後の言葉の発達と関連しているかを明らかにするための準備が整いつつある。 平成25年度のうちに,この手法を用いて約50組の親子を対象に実験を行い,親子間のコミュニケーションで生じる多様な指さしが生じることを確認できた。同時に,親子間のコミュニケーションで生じる指さしには個人差が生じることが分かってきた。平成26年度も,親子を対象とした実験を継続するとともに,既に実験を終えた親子に関しては,観察から半年後,および1年後に幼児の語彙量を計測する「日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙 語と身振り」および「日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙 語と文法」に対する回答を求め,親子間の指さしの個人差と,後の語彙量の発達的変化との関連性を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳幼児の指さしと後の言葉の発達との関連性を検討したこれまでの研究では,限られた時間の中で,ごく少数の指さししかサンプリングができていなかった。このため,指さしを,「発声が伴っていたかどうか」や「左右のうちのどちらの手によって行われたか」といった質的な側面から類型化できず,指さしのどういった側面が後の言葉の発達と関連しているのかについて検討することができていなかった。 上記のような欠点を克服するために,平成25年度は乳幼児から多様な指さしを引き出す実験的観察場面を作成し,その効果を検証する研究を行った。具体的には,実験室をポスターや玩具などで装飾し,その室内での親子間のコミュニケーションを観察した。その結果,この手法をもちいることにより,「指さしに発声が伴っていたかどうか」や「左右のうちのどちらの手によって指さしを行っていたか」などによって分類することが可能なほど,多くの指さしを親と子,それぞれからサンプリングできることを確認できた。さらに,約50組の親子を対象に観察を実施した結果,指さしの頻度や,指さしの質的側面には個人差があることが分かってきた。こういった指さしの量的・質的側面の個人差は,後の言葉の発達と関連しているかもしれない。 このように,これまでの研究により,言葉の発達と関連している可能性のある乳幼児の指さしの諸側面を捉えられることが分かってきた。本課題の目標である「1歳齢児による指さしが言語発達に結びつく条件の解明」のための準備が整ったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの達成度」において述べたように,これまでに1歳齢児による多様な指さしを検討できる実験的課題が出来上がった。今後は,この課題を用いてさらに多くの親子を観察することを通して,多様な指さしをサンプリングするとともに,その個人差について検討する。さらに,観察から半年後,および1年後に幼児の語彙量を計測する「日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙 語と身振り」および「日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙 語と文法」に対する回答を求め,指さしの諸側面の個人差と,後の語彙量の発達的変化との関連性を検討する予定である。
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