研究課題/領域番号 |
25780396
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
岸本 健 聖心女子大学, 文学部, 准教授 (20550958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 指さし / 言語 / 乳幼児 / 母子関係 / コミュニケーション / 発達 |
研究実績の概要 |
1歳齢の誕生日を迎える前後から産出されるようになる乳幼児の指さしに関しては,初出の時期が早いほど,また頻度が多いほど,後の乳幼児の語彙の量が多いことが知られている。一方で,なぜ乳幼児の指さしが後の言葉の発達と関連しているのかについては判然としていない。これまでの研究において,乳幼児の指さしのうちの「叙述の指さし」が特に,その乳幼児の言葉の発達と関連していることが分かっていたため,乳幼児の「叙述の指さし」を数多くサンプリングし,指さしの形態や指さしに伴う発声などを詳細に分析することで,なぜ乳幼児の叙述の指さしが後の言葉の発達と関連しているのかに迫れると考えられた。そこで本研究は,乳幼児の叙述の指さしを効果的にサンプリングする手法を考案するとともに,それが本当に言葉の発達と関連しているかを縦断的に確認することを目的として実施された。 本年度は,母子間で展開される叙述の指さしが頻出すると考えられる状況を設定し,そこで展開されるコミュニケーションの様子を乳幼児とその母親からサンプリングした。さらに乳幼児の指さしや言葉の発達を捉えるために縦断的な検討を実施した。 観察対象となった乳幼児のうち10ヵ月齢児は12名であり,そのうち,指さしを産出したのは2名(16.7%)であった。同様に,11ヵ月齢児は12名であり,うち指さしを産出したのは6名(50.0%)であった。さらに,12ヵ月齢児は8名であり,うち指さしを産出したのは7名(87.5%)であった。これらのことから,乳幼児の指さしの始発は,おおよそ11ヵ月齢から12ヵ月齢頃が多いことが示唆され,これまでの知見を追認できた。一方で,指さしの開始の時期には個人差が存在することも確かめられた。現在,これらの乳幼児を1年間に渡り追跡した縦断的データを解析しており,指さしの開始の時期の早い・遅いと言葉の発達との関連について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的を達成するためには,1歳齢頃の乳幼児の指さしに関して検討するとともに,その後1年間に渡り,当該の乳幼児の言葉の発達について追跡せねばならない。研究の目的の達成がやや遅れているのは,こうした縦断データの収集に時間がかかっていることによる。また,様々な事由により縦断データに欠損が生じており,その解析方法の検討に時間を割く必要があり,これもまた,研究の目的の達成をやや遅らせる原因となった。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で,当初の研究の目的を達成する上で十分な縦断データを得られる目処がたった。また,解析方法の検討もほぼ終わり,滞りなく研究結果について解析を行える見通しがたった。今後,できるだけ早く,得られたデータを解析し,学会発表および論文誌面上で報告することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請課題では,乳幼児の言葉の発達について,解析に耐えられるだけの人数の研究協力者を1年間に渡り縦断的に追跡する必要がある。次年度に使用する額が生じたのは,解析に耐えうるだけの人数の協力者の確保,および縦断的な追跡を平成26年度中に達成できなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,本申請課題の目的の達成のために追加した研究協力者への謝礼として使用する。また,得られた結果について公表するために必要な費用(学会発表にかかる旅費,および英語での論文作成に必要な英文校閲のための費用など)に充てる計画である。
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