研究課題/領域番号 |
25780397
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
篠ヶ谷 圭太 日本大学, 経済学部, 助教 (30645289)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 協同学習 / 自己調整学習 |
研究概要 |
協同的な問題解決時に学習者が辿る認知的,メタ認知的プロセスに関するモデルを構築するため,今年度は協同学習に関する先行研究を広く概観し,協同での学習成果を促進する要因の抽出および分類を行った。その結果,協同学習に関する要因は,学習内容に関する知識,動機づけ,協同の仕方に関する知識といった「学習者内の要因」と,協同する他者との知識量の差異および同質性や,関係性といった「学習者間の要因」,さらには課題の質や与え方,協同学習に対して評価を行う際の基準や方法など「指導者要因」の3つに分類できることが明らかとなった。また,申請者は自己調整学習研究(理解の深化や知識の定着を目指し,学習者が個人で学習する際のプロセスを対象とした研究)で提唱されているプロセスモデル(Muis, 2007)を援用し,これらの要因を布置した。Muis(2007)のモデルは,学習における「目標」を達成するために様々な方略が選択されることを想定しているが,学習者が個人ではなく他者と協同で課題に取り組む場合,個人の学習を意識した目標と,グループや他者を意識した目標の双方が活性化されるものと考えられる。今年度,申請者は以上のようなレビューに基づき,協同学習の際の学習者の処理プロセスに関して「多目標調整モデル」の提唱を行った。上述のプロセスを想定し,中学1年生および2年生を対象とした質問紙調査を実施して,協同時に学習者が設定する目標にはどのようなものがあるか,自由記述による回答を得たところ,多目標モデルが想定したように,「理解できるように」「問題が解けるように」など,自身の学習を意識した目標の他に,「相手がしっかり理解できるように」「相手の機嫌を損ねないように」など,他者を意識した目標が存在することが明らかとなった。現在,学習者の動機づけや信念と,協同時に活性化される目標との関連について分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
綿密なレビューによる関連要因の分類,また,研究会での報告と議論に基づき,協同学習時に学習者が辿るプロセスに関して,申請時よりも具体的な仮説モデルを生成することができた。また,中学生を対象とした調査によって,協同時に実際に設定される目標に関する回答が得られたことから,今後,学習者の要因と目標設定の関連および,協同時の目標設定と協同中の発話の関連について分析を行うことが可能となった。また,小学校教諭と連携し,今後,実践研究を展開するための重要な基盤を構築することができたことも大きい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた回答をもとに,協同時の目標設定に関する質問項目を作成する他,協同中の発話についても予備調査を行い,質問項目の作成を行っていく。そして,目標設定および発話に関する項目を整備した上で,予習の有無と協同時の目標設定の関連および,協同時の発話の関連について明らかにしていく。また,質問紙調査だけではなく,実験授業を行うことで,実際に予習を行わせると,協同中の学習者同士の相互作用がどのように変容するのか,予習方法を変えることでどのような影響が生じるのかについても検討を行う。さらに,小学校教諭と連携して,実際の教育現場での指導に予習や協同学習を取り入れることで,学習がどのように変容するのかについて長期的に検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年にミュンヘンで開催された国際学会(EARLI)で発表する予定であったが,データの収集が遅れたため参加を見送った。そのため,当初予定していた海外渡航費の分が次年度に持ち越されることとなった。 調査で収集された自由記述データの入力と分類,実践研究の中で収集される授業内の発話情報の入力には,申請時の予定よりも多くの作業が必要になると考えられる。本年度持ち越された研究費は,そうした作業を行う人件費に充てる。
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