研究課題
精神病の早期段階である精神病発症リスク状態(ARMS)と初回エピソード精神病(FEP)の家族の感情表出(EE)や苦悩は、慢性期の精神病の患者家族とは異なる特徴を持つと考えられているが、早期段階の若い患者と家族を対象とした研究には乏しい。本研究では、精神病の早期段階における家族の感情表出ならびに家族自身の精神症状を評価するとともに、患者の精神症状や機能を評価することで、精神病早期段階における患者の家族の心理的負荷がいかに形成・維持されるのかを調査し、ARMSとFEPにおける家族介入に必要な要因を解明することを目的とした。昨年度まで実施の「ARMSとFEPの家族における家族の感情表出と抑うつ症状」に着目した調査に、新規対象者を追加し、東北大学病院精神科で加療中のARMS患者56名と、FEP患者43名およびその家族を対象として、インテイクから1ヶ月以内に評価を実施した。家族の評価にあたっては、感情表出の評価として家族の批判的コメント(CC)に関する尺度FASを用い、抑うつ症状の評価にはBDI-Ⅱを用いた。患者の評価にあたっては、陽性・陰性症状評価尺度PANSSで患者の精神症状を、機能の全体的評定尺度GAFで機能の評価を行った。FAS得点はFEP、ARMSの何れにおいても高くなく、精神疾患早期段階での家族のCCはまだ高くないという先行研究を支持する結果が得られた。一方、FEPとARMSの何れの家族においても、約3分の1に抑うつは認められ、疾患段階に拘わらず家族の情緒的苦痛感が重要な問題であることが示された。家族のCCはFEPの段階になって初めて患者の症状、家族自身の抑うつとの相互作用を示すという結果が得られた。精神疾患早期段階の家族のCCは高いものではないが、病状が悪化進展する過程の中で患者および家族の症状と相互作用が始まり、固定化につながるという可能性が示唆された。
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PLOS ONE
巻: 11(2)
10.1371/journal.pone.0149875