研究課題/領域番号 |
25780406
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小堀 修 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 特任講師 (40436598)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心気症 / 健康不安 / 認知行動療法 / 主題分析 |
研究概要 |
心気症とは、(A) 身体感覚に対するその人の誤った解釈に基づき、自分が重篤な病気にかかる恐怖、または病気にかかっているという信念にとらわれ、(B) その信念が、適切な医学的評価または保証にも関わらず持続し、(C) 日常生活に支障をきたしている状態である。本研究の主な目的は以下の2つである: (1) 心気症に特徴的な恐怖が、どのように高まり、どのように持続してしまうのか、認知行動病理学の観点から検証する。(2) 心気症の傾向が高いほど、ヘルスケアコスト (e.g., 診察費、検査費、薬剤費、サプリメント) が高くなることを検証する。 平成25年度はまず、心気症に特有な再保証を求める行動を明らかにするため、DSM-IV-TRで診断される心気症を持つ患者10名に30分程度の半構造化面接を行った。インタビューはテープ起こしを行い、スクリプトを主題分析 (Thematic Analysis) を用いて質的に分析した。その結果、心気症者が再保証を求める動機づけは、重篤な病気に罹患していないことを確かにするためだけでなく、治療者から情緒的サポートを求めるためであることが分かった。強迫性障害を持つ者に比べると、再保証を求める対象は医療者に限られるため、対人的なトラブルは少なくなることが明らかとなった。 さらに平成25年度では、Health Cognitions Questionnaire日本語版 (HCQ-J)を作成し、その信頼性と妥当性を検証した。大学生160名を対象に質問紙調査を実施した結果、原版と同じ4因子が得られ、内的一貫性、並存的妥当性、弁別的妥当性が検証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画した研究を全て完了しているため。特に、質的研究は論文化して国際誌に投稿中である。また、平成26年度に計画している研究の準備として、質問紙が完成しているため、現在までの達成度は、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、前年度に作成したHealth Cognitions Questionnaire日本語版を活用して、心気症の行動面を解明していく。 研究3では、心気症者が再保証を求める動機づけは、認知行動理論が提唱するように、脅威を過大評価することか、対人モデル (Lynn et al., 2009) が提唱する、不安定な愛着スタイルを持つことか、を検証する。大学生200名を対象に質問紙調査を実施する。再保証を求める行動を測定するReassurance Questionnaire (Speckens et al., 2000) を従属変数とし、研究2で作成したHCQ-Jと、「つらいときに他者に一緒にいてほしい」と思う程度を測定する、親和動機測定尺度(岡島, 1988)を独立変数とする。抑うつ、不安、強迫症状を統制したうえで、脅威の過大評価と、親和動機のいずれが、従属変数である再保証を求める行動を予測するか、を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該未使用額は、平成25年度の研究計画を誠実に遂行した結果、英文校閲の割引を受けることなとで、わずかに生じたものである。この未使用額を、平成26年度に使用することによって、より研究が進展することが見込まれる。 次年度は大学生を対象とした質問紙調査を実施するにあたり、(1) 質問紙の印刷やデータ整理・入力、英文校閲等に関わる謝金、(2) 前年度の成果発表や資料収集のための国内外の学会参加に関わる旅費、(3) 質問紙作成、資料整理のためのインクや用紙、ファイル等の消耗品購入費を予定している。なお、前年度の残金の20668円を含めて今年度使用する計画である。
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