平成28年度は、申請時点において計画されていた2つの研究(「入院検査状況下での睡眠評価の歪みとその説明因子の検討」ならびに「日常生活下での睡眠評価の歪みとその説明因子の検討」)のデータ収集を継続し、日本行動医学会での中間結果報告を行った(第23回日本行動医学会学術総会プログラム・抄録集,68)。最終的に各研究に参加者した不眠症患者はそれぞれ30名であった。 「入院検査状況下での睡眠評価の歪みとその説明因子の検討」に関する研究では、(1)就寝時の疲労感が高い者ほど、入眠潜時を短かったと評価しやすい可能性があること、(2)入眠を睡眠段階1の出現を基準として判定した場合よりも、睡眠段階2の出現を基準として判定した場合の方が、入眠潜時評価の歪みが小さい可能性があることが示唆された。このことから、就寝時に疲労を感じているほど寝つきがよいと体験されやすく、従来の入眠判定基準よりも睡眠段階2を入眠の基準とする方が、個人の寝つきの感覚と近い可能性があると考えられる。 また、「日常生活下での睡眠評価の歪みとその説明因子の検討」に関する研究では、(1)体動計により推定される客観的総睡眠時間の日間変動が大きいほど、観察期間を総合した総睡眠時間は長かったと主観的に評価される可能性、(2)客観的入眠潜時の日間変動が大きいほど、観察期間を総合した入眠潜時は短かったと主観的に評価される可能性が示唆された。なお、本結果は、不眠症患者の初診時から第2診時までを観察期間とした臨床観察研究であるため初診時の診療による効果により、睡眠が肯定的に評価された可能性もある。今後は、様々な変数を統制した研究を行い、本結果と比較して検討する必要がある。
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