本研究の目的は大うつ病性障害が合併したパニック障害患者に対する心理社会的治療として,アクセプタンス&コミットメントセラピーの有効性の確認であった。本研究のプログラムの開発に関して、平成27年度内に開発を完了することができた。介入プログラムについては第三世代の行動療法であるアクセプタンス&コミットメントセラピー(Acceptance & Commitment Therapy: ACT)のマニュアルを日本語化したうえで,②研究協力者とともに実際のプログラムの開発、③予備的介入研究によるプログラムの検討、という3段階を経て開発された。また,ACTのプログラムに習熟するために、ACTのワークショップを受講し、最新のACTに関する知識を学んだ。そして、3月にはACTの日本におけるもっとも大きな学会であるACT Japanに参加し、事例を発表することで議論を深めた。これらの学習によりしっかりとACTの知識を身につけることでプログラムを作成するための基礎的な知識を得ることができた。次に,不安症のACTプログラムの翻訳をもとに,作成された日本語版ACTを4人程度の患者に対し実際にプログラムを実施し,録音・録画データの振り返りや,患者からのフィードバックを求めることから,実施に対して生じる問題点を洗い出し,改訂を行った。 その後,ACTプログラムと対照群となる認知行動療法プログラムを実施するセラピストを養成を行い,予備的介入研究として19名の患者に対して無作為割り付けを行い,プログラムを実施した。その結果,ACTプログラムを受けた患者は実施前と比較してパニック症状が改善することが明らかになった。また,その効果は,既存の認知行動療法と比較して同等の効果があることが示唆された。このことから,パニック障害患者の心理社会的介入として,ACTは有用であると考えられる。
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