研究課題/領域番号 |
25780411
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 千紘 京都大学, こころの未来研究センター, 研究員 (20624224)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心理アセスメント / 心身症 / 身体疾患 |
研究概要 |
身体に病を抱える心身症・身体疾患の心理療法においては,神経症水準よりもいっそう深い次元で心身の関連を捉えていく必要がある。本研究は,甲状腺疾患を対象に,質問紙法・バウムテスト・半構造化面接の3つの心理査定から彼らの心理的な特徴を明らかにし,それによって甲状腺疾患における心と身体の関連の一端を実証的に検証しようとするものである。 本年度は,甲状腺疾患144例(バセドウ病62例,慢性甲状腺炎33例,結節性甲状腺腫49例)と対象群として神経症44例に心理査定を実施し,バウムテストと半構造化面接のデータを分析した。 バウムテストの形態的特徴を79指標から分析した結果,1)自他・内外の心理学的境界を表象するとされる幹先端処理において,神経症群は閉鎖型が有意に多く,甲状腺疾患群は開放型が多かった。2)全体像の統合性について,甲状腺疾患群は接続および空間使用の不連続に特徴づけられ,異なる視点から描かれた各パーツが組み合わされていた。半構造化面接では,語り方に着目した78指標をもとにクラスター分析を行い,四類型を得た。類型的特徴は,1)感情の語られなさと流動的視点に特徴づけられるクラスターA・Bと,2)葛藤と定点に特徴づけられるクラスターDとで大きな対象をなしていた。日常の語りに近いと考えられるCはいずれの疾患群も多彩に含む一方,A・Bは甲状腺疾患群に,Dは神経症群に特徴的だった。出来事を内省的に語りにくいという点でA・Bは,心身症患者の特徴として従来指摘されてきたアレキシサイミア特性とも重なることが指摘された。バウムテストの結果と合わせて,甲状腺疾患の心理療法においては,語りの表面には現れてきにくい気持ちや感情を見通していく必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の二つの方法,すなわち「①心理検査から甲状腺疾患の心理的特徴を明らかにする」と,これをふまえて「②身体治療と心理指標の関連を検討する」のうち,「①心理検査から甲状腺疾患の心理的特徴を明らかにする」についておおむね目標通りに遂行することができた。先行研究の検討から精緻な心理指標を作成し,それに基づいてデータを分析し,その成果が論文として刊行された。また,①をふまえた上で実施される「②身体治療と心理指標の関連を検討する」についても継続して調査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果から,甲状腺疾患患者の心理特性の一端が明らかになったと思われる。今後は,この知見をベースに,手術という決定的な身体治療を経て心理的にはどのような変化があるのか,あるいは変化しないのかについて検討していく。まずは,本年度に収集したデータから,質問紙法・バウムテスト・半構造化面接について,順次データの分析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はデータの分析と論文作成を中心に,ほぼ研究代表者が研究を遂行した。そのため,調査そのものにかかる謝金の支払いが予定額より少なくなった。 次年度は,調査の実施と専門家によるより精緻なデータ分析を行う予定であり,謝金・人件費に使用する。 また,外国語論文の執筆を予定しており,論文校閲においても使用予定である。
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