平成25年度は,まず,臨床心理士養成大学院へのアンケート調査および現地視察を実施した。全国の臨床心理士養成大学院(専門職大学院を含む)を中心に,産業領域に関する講義・実習等の有無,具体的な教育プログラムの内容,カリキュラム以外での職域における臨床心理専門職養成のための取り組み(学外における勤務,公開講座の開催など),産業領域に関する大学院生の興味・就職状況などに関するアンケート調査を実施した。分析の結果,産業臨床を専門とする専任教員数,産業臨床に関する講義科目,実習科目,課外実習,セミナー等の開催,研究所・研究会などの設置のいずれにおいても,産業臨床に関する専門家を養成するには不十分な状況であることが明らかになった。なお,本調査結果は「臨床心理士養成大学院における産業臨床教育に関する調査」(広島大学心理学研究,13,243-249)にまとめた。また,先駆的な取り組みを実施している大学院等を訪問し,職域における臨床心理専門職養成のための教育プログラムのさらに具体的な内容を伺うとともに,現状における課題や問題点などについて聴取した。さらに,新たな教育プログラム作成に関するディスカッションを訪問先教員と行うこともできた。また,海外における産業保健心理職養成のための教育プログラムに関する最新情報の収集も行った。ヨーロッパ産業組織心理学会および職場の心理社会的要因に関するアジア太平洋専門家ワークショップに参加し,日本における調査結果を発表し議論するとともに,海外における産業保健心理職養成のための教育プログラムに関する最新情報を収集した。以上から得られた成果をもとに,職域における臨床心理専門職養成のための教育プログラム案を試作する準備を整えた。
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