前年度までに実施した研究に基づき,心理学を専攻する大学院生を対象とした,職場のメンタルヘルスに関する約20時間分の講義を作成した。本講義において取り上げた内容は,「労働安全衛生や職場のメンタルヘルスに関する歴史や法規」,「心の健康づくり計画の作り方」,「精神障害等の労災認定」,「職場のうつ・自殺対策」,「カウンセリング・コンサルテーション」,「職場復帰支援」,「ストレスチェック」,「職場のメンタルヘルスに関する教育研修」,「職場環境改善」であった。実施に当たっては,講師が一方的に講義を行うだけでなく,例えばストレスチェックのフィードバック場面のロールプレイや,職場環境改善活動の体験など,参加型の要素を多分に取り入れた。作成した教育プログラムが職場のメンタルヘルスに関する知識,興味・関心,志望度を高めるかについて検討するため,2つの心理系大学院に所属する大学院生合計56名を対象に,作成した教育プログラムを実施した。教育プログラムの実施前と実施後に,職場のメンタルヘルスに関する知識を問う自作の問題,産業領域に関する興味・関心の程度,大学院修了後に産業臨床に関する活動に携わりたいと思う程度を尋ねた。このうち,すべての教育プログラムを受講し,プリテスト,ポストテストの両方に欠損なく回答した38名を分析対象者とした。参加者内計画の一要因分散分析の結果,上記指標のいずれも,教育プログラムの実施によって有意に上昇することが明らかになった。なお,欧州における産業保健心理職養成のための教育プログラムに関する最新情報を収集するため,European Academy of Occupational Heath Psychology Conference 2014に参加し,発表を行った。
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