本研究は,がん医療に従事する看護師の共感疲労(compassion fatigue)予防に向けた基礎的研究である。研究内容は,1.患者のがん体験に接してから共感疲労に至るまでの間に,看護師の頭の中にはどのような考えが生じるのか(認知的反応)に関する質的検討,2.看護師を対象とした共感疲労測定尺度の作成および我が国の共感疲労の実態に関する量的データの提示,の2つのパートに大別された。 最終年度である平成28年度には,1.の質的研究パートおよび2.の量的研究パートの双方を完了させた。1.の質的研究パートでは,最終的に,がん医療に従事する看護師30名(男性1名,女性29名,平均年齢39±9歳)に対して半構造化面接を行った。得られた音声データはすべて逐語化した上で,内容分析を行った。分析により抽出されたコンテント数は計613となり,それらは40のカテゴリー構成要素および13の上位カテゴリーに分類された。 2.の量的研究パートでは,看護師を対象としたProfessional Quality of Life Scale日本語版(ProQOL-JN)作成のため,5つの医療機関に所属する看護師618名(男性45名,女性570名,性別不明3名,平均年齢39±10歳)を対象に質問紙調査を実施した。その結果,ProQOL-JNは3因子構造をもつこと,高い内的整合性及び再検査信頼性を有することが示された。また,関連尺度との相関についても理論的予測と一貫した結果が得られ,収束的妥当性が確認された。さらに,本研究データから,我が国における暫定的なカットスコアも提示された。 これらの研究成果は,平成28年度に開催された国内学会・国際学会において,ポスターおよびシンポジウムを通して発表された。また,結果の一部は論文化された。
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