本研究は社交不安症の病態の解明を、脳画像を用いて行うことを目的として行った。機能的MRIでは特に社交不安症患者が自己顔写真を見て恥ずかしさを感じる「自己反省(self-reflection)」に注目した。社交不安症では、健常者に比して、自己顔に対する恥ずかしさが強く、それに対応する部位として左腹内側前頭前野が同定された。最終年度はこの結果について英文論文にまとめ、投稿したが、受理には至っていない。 この左腹内側前頭前野は他者の気持ちを推測する機能(Mentalizing)に関与する部位であり、自閉症スペクトラム障害では機能が低下していることでも有名である。昨今社交不安症と自閉症スペクトラム障害の合併も注目されており、今回の研究成果をもとに、自閉症スペクトラム障害の社交不安症状の解明にも取り組んで行きたいと考えている。 また構造画像研究では、島体積が小さいことを発見した。島は社交不安症では、過剰に活動し、内受容感覚の過敏さを引き起こすことにより症状形成に関与することが指摘されている部位である。過活動と体積減少は海馬扁桃体などでも指摘されており、海馬扁桃体領域と密接に関連する島でも同様の現象が起きている可能性があり、島に関してもさらなる研究が期待される。
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