研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は,社交不安障害に対する認知行動療法の治療効果を高めるために,治療技法のひとつであるエクスポージャー(曝露法)を効果的に実施する技法を開発することである。治療効果を高める方法として情動調整方略の認知的再評価に注目し,認知的再評価とエクスポージャーを併用することによって効果が高まるかどうか,およびその効果発現メカニズムを注意配分やワーキングメモリといった認知情報処理の観点から行動科学的に調べる。平成25年度は,不安障害,認知的再評価,注意配分とワーキングメモリの関係について先行研究のレビューを行った。また,社交不安障害のワーキングメモリ測定に即した課題を同定するために,予備的な実験を行った。Social Interaction Anxiety Scale日本語版を用いて対人不安高群20名,不安低群20名を抽出し,会話中のワーキングメモリを測定する課題を実施した。会話内容や相手の服装および動作をどの程度覚えているかを調べたところ,統計的な有意差はみられなかったが,不安高群の方がワーキングメモリの成績が高い傾向がみられた。この結果は,operation span課題を用いた場合に,中性語に比べて社会的脅威語に関するワーキングメモリが全般性社交不安障害患者において高かったという先行研究(Amir & Bomyea, 2011)とも一致している。平成26年度は,認知的再評価が注意配分やワーキングメモリに及ぼす影響を実験によって検討する。
2: おおむね順調に進展している
対人不安の高い者と低い者に分けてワーキングメモリを比較する予備的な実験を行った。今後は認知的再評価が注意やワーキングメモリに及ぼす影響を調べる実験を行うことができる。これは当初の年次計画に近いペースで進んでいる。
研究計画の変更はなく,認知的再評価が注意やワーキングメモリに及ぼす影響を実験的に調べる。そしてH27年度以降の新たな技法効果研究を進めていく。
資料収集の機会が少なく済んだため。2014年9月に同志社大学(京都)で開催される日本心理学会第78回大会への旅費として使用する。
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